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ファルズフのしてきた事~前編~

「あぁ! ペルセポネ。お父様に会いに来てくれたんだねっ!」


 ん?

 どこかからお父様の声がする?


「ここだよ! こっち! 今日に限って仕事が多くて……冥界にハデスが帰ってきたから……」


 書類の山の奥からお父様の声が聞こえてくるね。

 神様も魔王も人間の王様もやっている事は同じだね。

 偉い立場の人なんて、ただ椅子に座って楽しているんだろうって思っていたけど実際は大変なんだね。

 

「うわあぁん! ウリエル! 手伝ってよぉ! って、いない!? 逃げたなあ!」


 お父様が子供みたいになっているよ。


「ウリエルが逃げるはずないでしょ? ハデスと話があるらしいの。さあ、早く仕事を片付けてペルセポネとお茶にしましょ?」


 お母様はいつもこうやってお父様を見張っているんだね。


「……じゃあ、オレは第三地区に帰る」


 え?

 ベリアルがお茶に反応しないなんて。


「ええ? お茶だよ? お菓子があるんだよ? いつもだったら、早く早くって催促するかわいいヒヨコちゃんなのに!」


「オレは……(天界は嫌いだ)」


「ん? ベリアル?」


「……天界にはいい思い出がないんだ。だから……帰る」


 声が暗いね。

 そういえば、天界には帰りたくないみたいだったし。

 だから第三地区で暮らしているんだよね。


「ベリアル……うん。分かった。第三地区で、おばあちゃんがベリアルの好きなポップコーンのキャラメル味を作っていたよ?」


「なに!? 急いで帰らないと! じゃあ、また明日な!」


「うん。また明日ね」 


 慌てて空間移動して帰ったね。

 良かった、いつも通りのベリアルだ。


「お母様? ベリアルは天界では寂しく暮らしていたの?」


「え? あぁ……お母様には、よく分からないけれど……皆が嫌がる仕事を無理矢理やらされていたみたいね」


「そんな……かわいそうだよ……」


「ベリアルは神力の量がすごかったの。でも、後ろ楯がなくてね……いいように利用されていたみたいね」


「だから、身体が返されても天界に戻らなかったんだね」


「ええ。そうね。第三地区で幸せに暮らしていて安心したわ?」


「うん。皆もベリアルが大好きだよ?」


「ペルセポネも一度だけベリアルと話した事があったわね?」


「え? そうだっけ?」


「あの時は薬のせいで朦朧もうろうとしていたから覚えていないかしらね?」


 薬で朦朧?

 あぁ、ファルズフのあの薬か。


「あの後ね? ハデスに連れ去られて冥界に行ったでしょ?」


「ええ。そうね」


「ファルズフの薬を飲まなくなってから体調が良くなったの」


「え? どういう事? 薬で発作を止めていたのに」


「ケルベロスが、わたしの身体から毒の臭いがするって言ってね? すぐにファルズフの薬だって思ったの。小さい頃から飲み続けていたって話したら、冥界のザクロを食べさせてくれたの」


「冥界のザクロを? あれは、ペルセポネを冥界に縛りつける為じゃなかったの?」


「うん。解毒作用があるらしいの。でも、量の加減が難しいらしくて。毒の量も種類も分からなかったからね」


「そうだったの。お母様はてっきりハデスが無理矢理食べさせたとばかり……じゃあ、赤ん坊の頃からの発作とか……先天性の獣を触らないと起こる禁断症状は?」


「うん……たぶん、ファルズフが産まれたばかりのわたしに、何かしらの呪いをかけたんだと思う。ハデスにも呪いをかけていたし」


「ハデスにも?」


「うん。ファルズフが言っていたの。誰かがヴォジャノーイの姿のハデスに恋心を抱いたら意識を失う呪いをかけたって」


「え? あれデメテルちゃんじゃなかったの?」

 

 お父様……?

 お母様がやったと思っていたんだね。


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