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古典的な罠に簡単にかかるベリアルも最高にかわいい

「さてと……」


 お?

 吉田のおじいちゃんが動き出したね。

 まさか出て行くなんて事はないよね?


 あれ?

『ざる』と『木の枝』を持ってきたね?

 紐もあるよ。

 何をするのかな?

 ドジョウすくいかな?

 それとも……木の枝でざるをくるくる回すとか?


「ぷはっ!」


 おじいちゃん……またわたしの心の声を聞いたんだね。

 

「おじいちゃん? 何をするの?」


 広場の誰もいないテーブルの上に、ざると木の枝を使って何かしているね。


「おじいちゃん……それってまさか……」 


 明らかに大昔からある罠だよね?

 獲物が、ざるの下に来たら紐を引いて木の棒を倒して捕まえるあれだよね?


「よし。完成だ」


「おじいちゃん? そんな古典的な罠で捕まる生き物なんていないよ? 一体何を捕まえるつもりなの?」


「まだ完成じゃねぇんだ。このざるの中にタルトを入れて……と。よしできた!」


 ちょっと待って、このざるのサイズと中に入ったタルトは……


「まさか……さすがのベリアルもこんな罠にはかからないよ?」


「まあ、少し離れて見てれば分かるさ。さて、皆、獲物がかかるまで隠れるぞ」


 いやいや、こんな罠にはかからないよ?

 第三地区の皆も楽しそうに隠れ始めたけど……


「(さすがにベリアルはこの罠にはかからないわ? 天界でも、それは強かったのよ?)」


 お母様の言う通りだよ。


「(そうだな。ベリアルはこんな罠には……)」


 ハデスが途中まで話すと……ベリアルが飛んで来たね。


「うわあぁ! タルトだ! 昼寝してる間にばあちゃんが作ってくれたのかな?」


 ベリアル!?

 そんな簡単になんでも食べようとしたらダメだよ!?

 しかも、ざるの真下に入り込んでタルトを食べ始めたよ!?


「そぉれ! 今だ!」


 え?

 吉田のおじいちゃん!?

 まさか紐を引いて捕まえるつもりなの!?

 うわあぁ!

 ベリアルがすっぽりざるに入っちゃったよ!?


「おじいちゃん! さすがにこれはかわいそうだよ!?」


 早く出してあげないと!

 

「うまあぁい! モグモグ」


 え?

 普通に食べている声が聞こえてきたよ?

 そんなはずは……

 さすがに怖いはず……


「えっと……ベリアル、開けるよ?」


 嘘でしょ?

 普通に食べているよ?

 しかもおいしそうに……


「えっと……ベリアル、大丈夫?」


「ん? 何がだ? すごいうまいぞ! モグモグ」


「あ……今、罠にかかっていたけど平気なの?」


「ん? 罠ってなんだ?」


 気づいていなかったのか……


「もう! 吉田のおじいちゃんはベリアルを二度と罠にかけないでね?」


 とりあえず怒っておかないと、またやりかねないからね。


「ぺるぺるは勘違いしてるぞ? これは明日からの訓練だ!」


「え? 訓練って……何が?」


「ベリアルは明日から人間のアカデミーに行くんだ。気をつけねぇとなぁ」


「……今時こんな罠をかける人間なんておじいちゃんくらいだよ? あ! でもベリアルはこんな古典的な罠にかかったよね……」


 練習は必要かも。

 わたしがトイレに行っている時は誰かに預かってもらわないとだよね?

 ココちゃんとアンジェリカちゃんなら安心だけど……


「ねぇ? ベリアル、明日から人間のアカデミーに行くけど『おいしいお菓子がある』とか『キャンディをあげるから付いておいで』って言われても絶対に付いて行ったらダメだよ? 分かる? ベリアルは聖獣っていう設定になっているんだからね? 誘拐されたら大変だからね?」


「オレはそんな簡単に誘拐なんかされないぞ? モグモグ」


「「「……」」」


 うわぁ……

 いつも賑やかな第三地区の皆が黙っちゃったよ。

 こんな古典的な罠に簡単にかかっちゃうんだから、皆も心配になっちゃったよね。

 

「ぷはっ! あははは!」


 吉田のおじいちゃん!?

 急にどうしたの?

 

「あははは! ベリアルは本当にかわいいなぁ!」

「ほれ。もっとお菓子を食べろ。お茶もあるぞ?」

「ベリアルの為に明日からアカデミー用のおやつをいっぱい作るからなぁ。もし変な奴に捕まったら空間移動して逃げてくるんだぞ?」


 第三地区の皆もベリアルがかわいくて仕方ないんだね。

 その気持ち、よく分かるよ!

 ベリアルは本当にかわいいんだから。


「やったぁ! おやつ大好きっ! クッキーとタルトとおはぎと……あとは何かな? 楽しみだなぁ!」


 ベリアル……

 完全に遠足前の子供みたいになっているよ?

 でも……

 かわいいっ!

 わたしの息子は世界一かわいいよっ!

 

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