その時は必死だったけど冷静になると思い出して恥ずかしくなる時ってあるよね
「ペルセポネ……大丈夫か? ヨシダのおじいさんとの事は離れた場所から見ていたが……」
ハデス、目が覚めたんだね。
「ハデス……ハデス! おじいちゃんが行っちゃったよ! 早く追いかけないと……今頃ひとりぼっちで泣いているよ」
「そうだな。第三地区に弟が帰ってきているかもしれない。水晶で捜してみよう」
「お父様の水晶で?」
「ああ。もう泣くな。大丈夫だ。一緒に捜そう」
お母様とハデスと三人で第三地区に歩いて向かうと、泣いているわたしに気づいた雪あん姉が駆け寄ってくる。
「どうした? 誰かにいじめられたか? オレがやっつけてやるぞ?」
「雪あん姉……おじいちゃんが……吉田のおじいちゃんが……うぅ……」
ダメだ。
涙が止まらないよ。
今頃ひとりぼっちで泣いているはずだよ?
早く捜し出さないと。
「ん? 晴太郎がいじめたのか? 晴太郎は……いた! 広場でお月ちゃんとお茶を飲んでるなぁ」
え?
雪あん姉?
今なんて言ったの?
「吉田のおじいちゃんがいるの!?」
雪あん姉は背が高いから見えているのかな?
ここからじゃ見えないよ。
広場にいるってどういう事?
しかも、おばあちゃんとお茶を飲んでいるって?
広場に走って向かうと……
「吉田のおじいちゃん!?」
どうして?
さっき出て行くって……
「はい。お月ちゃん『あーん』」
「ほら、晴太郎も『あーん』しろ?」
おばあちゃんと仲良くタルトを食べさせ合っている!?
しかもニヤニヤして、ご機嫌だよ!?
「吉田のおじいちゃん!? どういう事!?」
さっきと話が違うじゃない!
あんなに心配したのに!
「んん? じいちゃんはハデスちゃんが目覚めたからもう第三地区に帰るって言ったんだけどなぁ? どうかしたんか?」
「はぁ!? だって出て行くって……まさか……幸せの島から第三地区に出て行くっていう事!?」
「ぺるぺるってば、かわいいちゃんっ!」
はぁ!?
こんな近い距離を空間移動してまで、わたしを騙したかったの!?
……いや、違うね。
おじいちゃんは本当に出て行こうとしていたんだ。
群馬でずっと側にいたから、わたしには分かるんだ。
だからおじいちゃんも分かるんだね。
わたしが隠れたおじいちゃんを絶対に捜し出すって。
わたしに迷惑をかけない為に残ってくれたんだ。
おじいちゃんは優しいから……
って、あれ?
おばあちゃんに鼻の下を伸ばしきっているね……
「あはは! もうっ! お月ちゃんてばかわいいちゃん! ぐふふ」
わたしに迷惑をかけない為に、ここに残ったんだよね?
あり得ないくらいニヤニヤしているよ?
うーん。
でも……出て行かなくて良かったよ。
ひとりぼっちで寂しい思いをしているおじいちゃんなんて、想像しただけで辛くなっちゃうから。