おじいちゃん……ずっと辛かったんだね
「違うよ……少なくともわたしは違う。綺麗な心なんかじゃなかった。両親がいる友達に嫉妬したし、どうして自分だけ不幸なんだって恨んだりもしたよ? わたしの心の中はいつもグチャグチャでドロドロで……だからわたしは清らかなんかじゃないよ」
心の声が聞こえるおじいちゃんなら分かったはずだよ?
「そんなのはかわいいもんだ。じいちゃんは自分の子を捨てたんだ。前にぺるぺるがポセイドンに言ってたなぁ。大事なのは見た目じゃねぇって。中身なんだって。でも、実際自分の子が……あんな姿で産まれてきたらなぁ……」
「おじいちゃん?」
「じいちゃんはなぁ、自分の子を捨てた事に腹を立てた妻に大事なところを切り落とされてなぁ……もう気持ちがなんともならなくなって……姿を変えてこの『人間と魔族の世界』で暮らすようになったんだ」
「この世界に……? ずっと……見ていたの? 手離した子供を……陰ながら守っていたの?」
「……じいちゃんはなぁ、今でも後悔してるんだ。捨てた子は魔族の中で育った。今いる魔族の先祖は『つがい』で一組ずつ創りだした。その頃は魔族は種族同士で別れて暮らしてはいなくてなぁ。皆で協力しながら暮らしてたんだ。あの子も大事に育てられてなぁ。それから……人間の娘と恋をして、子が産まれたんだ。その子は人間の姿のかわいい女の子でなぁ。じいちゃんは……もっと苦しくなったんだ」
「……苦しくなった?」
「そうだ。じいちゃんの心が醜いから……だからあの子は醜い姿で産まれたんじゃねぇかってなぁ。『心の美しいあの子』の娘は人間の姿で産まれた。子孫繁栄の実はまだ無かったのになぁ。そして……神力も持っていた。『父親のあの子』には闇の力しかなかったのになぁ」
「おじいちゃん……」
辛そうだよ。
見ているわたしも苦しくなるよ。
「魔族の数はどんどん増えていってなぁ。じいちゃんが創りだした種族じゃねぇ魔族も産まれ始めた。ハーフってやつだなぁ。いろんな血が混じると良くねぇ事が起きると思ってじいちゃんは子孫繁栄の実を作ったんだ。それからは、人間が無理矢理魔族に子を産ませられる事は無くなった。その為に子孫繁栄の実は『母親の種族が産まれる果物』にしたんだ。魔族が自分の種族を増やす為に人間を利用しない為になぁ」
「……おじいちゃんの子供は今はどこにいるの?」
「じいちゃんも妻も天族だからなぁ。あの子は天界に行く事ができた。でも知っての通り天界は天族以外を認めねぇからなぁ。神の子でもあの容姿じゃあ迫害されるのは目に見えていたんだ。このままこの『人間と魔族の世界』で穏やかに幸せに暮らしていければ……そう思っていた。でも、人間のあの子の妻は長くは生きられねぇ。あの子の娘も人間の血が入っていたからなぁ。普通よりは長く生きたが……」
おじいちゃんの子供はひとりぼっちになったのかな?
話をしているおじいちゃんも辛そうだよ。