おばあ様と友達のおじいさんの過去の話にドキドキする
「カサブランカ……今はもう虫取り網を持って走り回っていないだろうな?」
公爵の記憶の中のおばあ様はそういう感じなのか。
小さい頃のまま止まっているみたいだね。
「ふふ。さすがにそれはありませんよ? ですが、殿下とならばまた冒険をしたいですね」
「う……! いや、わたしは遠慮する」
「そうですか。残念ですね。わたくしの幼い頃の思い出にはいつも殿下がいて……記憶の中の殿下はいつも笑顔ですよ?」
「……そうか」
「もう時効でしょうから申し上げますが、殿下はわたくしの初恋だったのですよ?」
「え? だが、カサブランカは地下牢でシャムロックの『あの王子』に心を奪われていたではないか」
「(考えてみればあの時が過ちの元だったわ……)」
ん?
おばあ様が小声で何か言った?
「カサブランカ? どうかしたのか?」
「ああ……いえ。あの……殿下はわたくしに『おともらちになってくらしゃい』と花を一輪手渡した事を覚えておいでですか?」
「……! あぁ……いや……そうだな……」
あれ?
公爵は今度は真っ赤になっているね?
恥ずかしい思い出なのかな?
「あの時、わたくしは恋に落ちたのです」
え?
おばあ様は公爵を好きだったの?
「……まだ四歳の頃だろう? 覚えているのか?」
おお!
公爵が動揺しているね。
かわいいかも。
「はい。今思えばずいぶん早い初恋でしたが……わたくしの為に花にいたてんとう虫を泣きながら必死に逃がして、鼻を垂らしながら手渡してくださって……あの時の花は押し花にしてシャムロックにあるのですよ? 宝物だからと、父がシャムロックに届けてくれました」
なるほど。
かわいいけど少し恥ずかしいかも。
だから公爵は顔が赤くなっていたのかな?
「そうだったのか……だが、カサブランカはあの時シャムロックの王子に恋心を抱いたのだろう?」
「その頃の殿下は身体も丈夫になり、ご立派になられましたので……」
「やはりカサブランカはダメ男好きだったのだな」
「わたくしは……わたくしが側にいないとダメな殿方を好きになるようです。殿下はあの頃には身体から毒も抜け立派な王子様でしたから。もうわたくしの出る幕は無かったのです」
「その時、現れたダメ王子に心を奪われたわけか」
「はい。あの人はあの頃もダメでしたが、今はさらにダメなのですよ?」
「今は確か、世界の果てを探しているとか」
「はい。困ったものです。遊び回っていてまだヘリオスにもペリドットちゃんにもココちゃんにも会っていないのです」
「『あの王子』らしいな」
「はい。本当にバカなのです」
おばあ様はおじい様と結婚した事を後悔しているのかな?
おじい様は、かなりのダメダメみたいだね。