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怪しいと分かっていても立場上買うしかない時ってあるよね

「実は、牢の入り口にあった神聖物が破壊されていました。それだけではなくアンジェリカを拐おうとした者が囚われていた場所に見た事の無い魔法陣が残されていました」


 公爵が、わたしを見て耳を赤くしながら話し始める。


「神聖物?」


 ……と、魔法陣?

 ん?

 魔法陣が残っていたって?

 そんな事があるのかな?

 わたしもハデスも空中に出た魔法陣はいつもすぐ消えちゃうけど。


「はい。魔族避けですね」


「魔族避け? その神聖物があると魔族が来なくなるの?」


 海賊の魚人族達は牢獄とか執務室とかにこっそり遊びに行っているって言っていたよね?

 普通に入れているっていう事じゃないかな?

 どういう事?


「神殿の神官が取り扱っている物でして、大国だからと特別に……」


「はあ!? ちょっと待って! いくらで買ったの? まさかお兄様が買ったんじゃないよね!?」


「いえ、神官の訪問は年に一度、数週間ほどです。毎回訪問の度にいくつか購入……というよりは神聖物を譲り受ける返礼として寄付をしています」


「は!? とんだ詐欺師だね!」


「詐欺師……ですか?」


「神聖物なんかで魔族が寄りつかなくなるはずがないよ? わたしは聖女だったけど魔族とは仲良しだし。それに、こんな事を言いたくはないけど神官がいれば魔族が国に入って来ないなんて大嘘だからね? だって実際、普通に護衛の魔族が出入りしていたんだよ?」


「その事をペリドット様にお伝えしたかったのです。今は神官が滞在中の為、魔族に護衛は頼めないのではないかと……」


「今日、わたしがリコリス王国に入ってからずっと、魔族が離れた場所から見守ってくれていたの。でもなんともなかったよ? 公爵は本気で神聖物なんて信じていたの?」


「……ここだけの話ですが、微塵も信じておりません。ですが神官は世界各国を巡ります。大国であるリコリスが神聖物を譲り受けなかったと知れ渡れば恥になります」


「寄付を惜しんだと思われたくないっていう事?」


「その通りです」


「バカみたいだよ……その事にお兄様は、なんて?」


「神聖物は偽物だから譲り受ける必要はないと……」


「それが正しいよ。そんなお金があるなら民に使いたいはずだよ?」


「陛下も全く同じ事を。ですが、大国として恥をかくわけには……」


「他の三大国には巡礼に行ったのかな?」


「いえ、まだこれからです。今回は新王になられた祝いにと一番に訪問してきました」


「ふぅん。若い王だから簡単に騙して神聖物を大量に売ろうってわけか」


「売るのではありませんよ? 譲り渡す代わりに寄付を受け取っているのです」


「……公爵は本気でそう思っているの? さっきみたいに、ここだけの話をして欲しいな」


「はい。それでは……あの胸くそ悪い神官達は金の亡者です。二度と訪問して欲しくありません」


「ふふふ。だよね? 良い事を考えついたんだけど。一緒におもしろい事をしてみない?」


「おもしろい事を……ですか?」


「そうだよ? 神官の神聖物に魔族から守ってくれる効果は無いって皆に教えてあげるの」


「ほぉ……どのように?」


「ドラゴンにでも来てもらおうか」


「え!? ドラゴン!? それではリコリス王国が滅びてしまいます」


「ふふふ。ドラゴンは家族みたいな存在なの。だからお願いしてみるよ。神聖物を民に見物してもらっている最中にドラゴンが現れたら……おもしろいと思わない?」


「ペリドット様……素晴らしいお考えです。さすが王太后の血をひいておられるだけの事はありますな」


 え?

 おばあ様の血をひいているだけの事がある?

 こんなに品の良いおばあ様が、ひねくれ曲がったわたしみたいな考えをするはずが無いよ?

 

「あら、それは楽しそうね。ヘリオスが神聖物が偽物だと世界に公表すれば……ふふふ。愉快な事になりそうね」


 おばあ様……

 笑っているけど目が怖いよ?


「もしかして……おばあ様も神聖物を買わされたの?」


「わたくしではなくて、『あのバカ』が買ったのよ? だから怪しいと言ったのに」


「あのバカ? まさか……おじい様?」


 おばあ様が悪口を言う相手は一人しかいないよ。


「本物のバカなのよ。今回、神聖物が偽物だと知れ渡ったら一度シャムロックに連れ戻さないと……うふふ。お仕置きが楽しみだわ」


「おばあ様……」


 まだ会った事は無いけど、おじい様はどんな目に遭わせられるんだろう。

 さすがに『火干し』なんて事は無いだろうけど。

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