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小さな手と、余計な事ばかり言う口

「オケアノスなら大丈夫そうだなぁ。キャラ設定が難しいらしくて、もう少し考えてぇみてぇだ」


 吉田のおじいちゃんは何を言っているの?


「キャラ設定? 何それ?」


「オケアノスは過去の記憶があるみてぇだからなぁ。第一声をどうするか考えてるんだろ」


「……え? 『おぎゃあ』とかじゃないの?」


「ぺるぺるだってこの世界で初めてしゃべったのは『おぎゃあ』だったけど、その後すぐに『なんか、すみません』って普通に話し始めただろ? ぷはっ! ありゃあ、笑ったなぁ。産まれて数千年経ってるオケアノスに『おぎゃあ』を求めるのはちょっとなぁ。見てて痛々しいだろ?」


 まさかあの時の事を見られていたなんて……

 じゃあ、わたしもやり返させてもらうよ。


「それもそうだね。吉田のおじいちゃんがマンドラゴラの姿で『キュイキュイ』言っていたくらい痛々しいよ」


「さりげなく悪口を言ったなぁ……よし、うさちゃん。卵から両足と両腕を出してみろ。絶対かっこいいぞ! ぷはっ!」


「ちょっと! 変な事を言わないでよ! うさちゃん……やらなくていいんだよ。考えてみて? 卵から天族の両足と両腕が出て、その姿のままスタスタ歩いていたら怖いでしょう?」


「……」


 あれ?

 返事がない?

 どうしちゃったの?

 まさか、具合が悪くなったんじゃ……


「大丈夫だ。うさちゃんは必死に考えてるんだ。卵から両足と両腕を出すべきか出さねぇべきかを……」


「ちょっと! 変な事を考えさせないでよ! うさちゃん……考えなくていいんだよ。両足と両腕が出ている卵なんて見たらベリアル怖がって泣いちゃうよ? ね? おばあちゃんに相談したら解決するはずだから……」


「ええぇ? 絶対かっこいいんに。スタスタ歩く卵なんて絶対にかっこいいんに!」


「もう! おじいちゃんは黙ってて! ほら、第三地区に空間移動するよ! うさちゃんとオケアノスは目を閉じていてね? 眩しくなるよ」


 あれ? 

 ハデスが静かだね?

 さっきから全然話さないよ。


 ん?

 卵から出ているうさちゃんの手がハデスの手をしっかり握っている。

 きっとハデスの顔が、すごく嬉しそうになっているはず……


 って……

 違う……

 全然違うよ!?

 うさちゃんがハデスの手をつねっているんだ!

 うわあ……

 ハデスが呆然としている。

 まさか、あんなに楽しみにしていた赤ちゃんの第一声が『ゴミ虫めが』だなんて。

 それどころか、ずっと温めていた父親であるハデスの手をつねっている……

 

 ハデスはこの状況をどう思っているの?

 これから先、仲良くできるんだよね?

 いきなりケンカなんてしないよね?


「ぷっ……」 


 ……!?

 ハデスが吹き出した!?

 まさか、怒り過ぎておかしくなっちゃったとか?


「ハデス……大丈夫?」


「あぁ……大丈夫だ。子うさぎは子うさぎのままなのだな。安心した」


「……ハデス」


「子うさぎ……波打ち際で貝殻を拾いながら第三地区に行こう。今まではペルセポネの為に貝殻を拾っていたが……これからは子うさぎとオケアノスの為に美しい貝殻を拾おう」


「……」


 うさちゃんは、ずっと黙っているね。

 でも、しっかりハデスの手をつねっているよ。

 あれ?

 うさちゃんの小さな指が……

 ふふ。

 ハデスの人差し指をしっかり握った。


「……子うさぎは今のままでいい。もちろんオケアノスもそのままでいい。どんな性格でも容姿でもわたしとペルセポネの子供達だからな。慣れるまで時間がかかるかもしれないが……ゆっくりゆっくり家族になっていこう」


 ハデス……

 やっぱりハデスは素敵だね。

 ゆっくりゆっくり、わたし達らしい家族になっていけばいい……か。

 そうだね。

 ゆっくりゆっくり……

 前に進んでいけばいいんだ。


「卵人間……ぷはっ! 卵に目と鼻と口を描かねぇとなぁ。昭和の少女漫画みてぇにキラキラの瞳にするか?」


 吉田のおじいちゃん……

 お願いだからこれ以上話さないで……

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