卵を産んでもう一週間経ったんだね
「ううーんっ! 今日も幸せの島は快晴だね!」
空と海の境が分からないくらい、どこまでも青いっ!
波打ち際でする伸びは最高だよ!
「ぺるみはご機嫌だな」
『うさちゃんのお気に入りのベット』に座るハデスを羨ましそうに見つめながら、ベリアルが話しかけてきた。
と言うよりはハデスが抱っこしている卵を見つめているのかな?
本当は卵を抱っこしたいけどハデスが離さないから見つめる事しかできないんだよね。
「では、わたしは卵を『子うさぎが昼寝する島』に連れていき温める。ペルセポネは自分の時間を楽しんでくれ」
卵を大切そうに抱っこしながらハデスがベットごと『うさちゃんがお昼寝する島』に移動していく。
魔法石で動くベットから降りると卵がソワソワするのが見て分かるからって、ハデスもずっとベットにいるんだよね。
ハデスは一秒も卵を離したくないらしいんだ。
かわいくて仕方ないのは分かるんだけど、お父様にもお母様にも抱かせてくれなくて。
お父様はそのせいで泣いちゃうし、吉田のおじいちゃんはそれを見て『応援の舞だ』とか言ってふんどし踊りを始めるし……
今まで以上に賑やかになったよ。
あぁ……
ベットに座るハデスの後ろ姿がすごく幸せそうだ。
「やれやれ、あれが誰からも恐れられる冥王ハデスか? すっかり優しい父ちゃんだよな」
ベリアルが呆れながらハデスの後ろ姿を見つめているね。
「あはは! ハデスは元々優しいんだよ」
誤解されやすいだけなんだよね。
「まぁ、それは分かるけど実際怖いだろ……?」
ベリアルは天界でハデスに鍛錬されていたからその気持ちも分かるけど……
「卵を産んでもう一週間か……あっという間だったなぁ。産後三日間は身体中筋肉痛で大変だったよ」
「ははは! 確かに。でも、一昨日から冥界で仕事復帰したんだろ? 大丈夫なのか?」
「うん。天界からの使者はすっかり大人しくなったからね。今では皆、わたしのしも……まぁ、従順になったよ。あはは!」
「お前、今しもべって言おうとしたよな? それより、赤ん坊の名前は決めたのか? もちろんハデスが決めるんだよな? ハデスが決めるんだよなっ! ハデスに決めさせろっ!」
かなり必死だね……
「ちょっと……わたしのネーミングセンスを疑っているよね? 失礼だよ?」
「だって、うさぎに似てるからうさちゃんとか、マンドラゴラにもお兄ちゃんとかお姉ちゃんとか分かりやすい名前をつけてただろ? お前に任せたら『赤ちゃん二号、赤ちゃん三号』とかにしそうで怖いんだ!」
「さすがにそれはないよ。でも、二号と三号? 一号は?」
「マンドラゴラに『赤ちゃん』がいただろ? だからだ!」
「ふふ。そうだったね。でも……赤ちゃんの名前はハデスと相談して決めてあるの」
「そうなのか?」
「うん。でも、卵から孵るまでは秘密だよ」
「秘密? そうか。じゃあ孵ってからのお楽しみだな!」
「ねぇ、ベリアル?」
「ん? なんだ?」
「昨日は、先代のマグノリア王と世直し旅をしてきたんでしょう?」
「うん! でも、悪い奴がいなかったから観光した後に旨いお菓子をいっぱい買ってもらって帰ってきたんだ」
「ふふ。楽しかったみたいだね」
「じいちゃんは王様をしてた時より顔色もいいし元気だぞ」
「そうみたいだね。息子さんに譲位してやっと自分らしく生きられるようになったみたいだね」
王様だった時には苦労ばかりしてきたみたいだから、これからは好きな事をして過ごして欲しいよ。