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転がる卵とそれぞれの居場所

「オレ達は家族だ。今は離れて暮らしてるけど、心は繋がってる……そうだろ?」


 太陽の光で、雪あんねぇの笑顔が輝いて見える。

 大好きな雪あん姉に抱き上げられているだけでも嬉しいのに『心が繋がっている』……か。

 すごくすごく嬉しくて興奮してきちゃった。

 やっぱり、わたしは本物の変態なのかな……?


「うん……ありがとう。やっぱり雪あん姉は、わたしの憧れのお姉さんだよ」


 鼻息が荒くならないように気をつけないと。


「ぺるみ……」


 雪あん姉の優しい瞳がわたしを見つめている。

 雪あん姉の優し……

 ん……?

 向こうの波打ち際に見える『あれ』は……


 ……!?

 

「はあ!? 何あれ!?」


 どうして卵が……

 どうしてわたしが産んだ卵が転がっているの!?

 幸せの島に坂なんてないよ!?


「待て! 待つのだ!」


 ハデスが慌てて追いかけているけど……

 全然追いつかない?

 あのハデスでも追いつかないなんて、どうなっているの?

 ハデスだけじゃなくて幸せの島にいる皆が追いかけている。

 間違えて卵を踏まないか心配だよ。

 ん?

 リヴァイアサン王とケルベロス王も来ていたんだね。

 

 それにしても……

 卵が何かを探しているかのように波打ち際を転がっている?

 

「これって……まさか……」


「ぺるみ? 何か分かったんか?」


 雪あん姉が尋ねてきたけど……


「うん。ふふ。卵の中のうさちゃんは……うさちゃんのままなんだね」


「……え? じゃあ、まさか…貝殻拾いをしようとしてるんか?」


「あはは! それよりも大切な事……かな?」


「それよりも大切な事?」


「うさちゃんの定位置に戻りたいんだよ」


「……? 定位置? まさか……」


「うん。『うさちゃんがお昼寝する島』のフカフカのベット……そこでウトウトしたいんじゃないかな?」


「じゃあ……卵の中の赤ん坊は……それぞれの記憶を持ったまま卵から孵るんか?」


「分からない……本能でそうしているのかもしれない。でも……嬉しい……すごくすごく嬉しいよ」


「それにしても、ずいぶん転がるな。海に流されそうで心配だ」  


「大丈夫みたいだよ? ほら、魚族長と魚族長のお母さんと魚族達が海の中から見守ってくれているから」


「確かに! ははは! 魚族長は、かなり慌ててるぞ。こりゃあ、毎日賑やかになりそうだ!」


「うん……今までも賑やかだったけど……これからはもっともっと賑やかになりそうだね」


「桜の木の下の聖女も嬉しいだろうな。オケアノスの笑い声が聞こえる幸せの島で、心穏やかに眠れるはずだ」


「……うん。遥か昔……ほんの一瞬触れあった二人が……これからは、この幸せの島で同じ時を過ごせるんだね」


「それぞれが、それぞれの大切な相手と暮らせるようになった……か」


「……皆が幸せな未来へ進み始めたんだね。あ……」


 波打ち際に浮かんでいる『うさちゃんがお昼寝する島』に卵が転がり込んだのが見える。

 

 ……本当にうさちゃんなんだね。

 でも、あんなに転がって目が回らないのかな?

 そういえば、アマリリスも魚族長に近づきたくてすごい勢いで転がっていたっけ。

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