自分をやたら褒めている部屋に入るのって気まずいよね
真っ白いヒヨコちゃんの姿になっているお母様に、リコリス王国にあるシャムロックのタウンハウスに空間移動してもらう。
ココちゃんに会わないように、こっそりおばあ様に会えるかな?
誰にも気づかれないように廊下を歩く。
悪い事をしている気分だね。
普段からベリアル相手に気配を消す練習をしていて良かったよ。
「(ペルセポネ、わたしは話せない事にするわ? 先ほど声を聞かれているから。ヒヨコのベリアルの友達が空間移動してくれた事にしましょう?)」
お母様の言う通りだね。
声でばれたら大変だよ。
「(そうだね。お母様がいてくれると心強いよ)」
「(ふふ。おばあ様にたくさん甘えるといいわ。おばあ様もそうして欲しいはずよ?)」
「(……うん。でも、元の身体に戻ったから心配なんだ。だって、もうおばあ様の孫のルゥじゃないから)」
「(おばあ様は今の姿のペルセポネも必ず愛してくれるわ? 大丈夫よ)」
「(お母様……)」
「(今からお母様の事は『ヒヨコちゃん』と呼んでね? さすがに『お母様』はおかしいでしょう?)」
「(うん。じゃあ今からヒヨコちゃんって呼ぶね? あ……)」
この部屋の中からおばあ様の声が聞こえてくるね。
「ルゥちゃんが訪ねて来るのはいつかしら? 楽しみだわ? ふふ」
おばあ様……
嬉しいよ。
すごく嬉しいよ。
「わたしは先ほどお会いしましたが、それはお美しく聡明でした」
おお……
公爵もいるのか。
まあ、アルストロメリア王国時代からの知り合いみたいだから、よく遊びに来ているのかもね。
扉をノックしたいけど、こんなに褒められたら恥ずかしくてちょっと無理かも。
公爵、お願いだからそれ以上良く言わないで!
「それにしても、あの時そのような事があったとは」
「早く話さなくてごめんなさい。黙っているように言われていたの」
……?
なんの話かな?
「(頑張って。ペルセポネ)」
お母様が、かわいいヒヨコちゃんのキラキラの瞳で応援してくれている。
あぁ……
かわいいヒヨコちゃんだね。
でもベリアルに対する気持ちとは違うみたい。
ベリアルは何をしてもかわいいんだ。
ただ息をしているだけでかわいくて堪らない。
わたしにはベリアルを産んだつもりは無かったけど、本能みたいなものがベリアルを子供だって教えてくれていたのかもしれないね。
まぁ、ベリアルに出会う前から変態的にモフモフ好きではあったんだけどね。
ベリアルが現れてからは、さらに変態になったんだよね……
ヒヨコちゃん相手によだれを垂らしながら鼻血まで出しているんだから。
よし、考えていても仕方ないね。
ハデスが起きるまでに幸せの島に帰らないといけないし。
勇気を出してノックするよ!
コンコン
あぁ……
ドキドキする。
おばあ様はペルセポネの姿になったわたしをルゥだって気づいてくれるかな?