やっぱり雪あん姉はかっこいいお姉さんだよ
「ゼウスは家族の為ならなんでもするから……」
お母様の言う通りだね。
「……うん。ありがたいけど、心配にもなるよね。あ……おばあちゃん、お母様、雪あん姉、おあいちゃん。ずっと手伝ってくれてありがとう。皆のおかげで無事に産む事ができたよ」
きちんとお礼を言わないと……
「うわあぁぁぁっ!」
……?
外からベリアルの叫び声が聞こえてきた?
どうしたんだろう?
「待て! どこに行くのだ!?」
ハデスの声も聞こえてきた?
一体どうしたの?
あのハデスがこんなに慌てた声を出すなんて……
まさか、卵に何かあったの?
「ぺるみは待ってろ! ばあちゃんが見てくるから!」
おばあちゃんと、おあいちゃんが外に確認しに行ったけど……
何があったんだろう?
「ペルセポネ……お母様も見てくるわ。まさかとは思うけど……誰かが卵を落としたのかも……」
お母様が心配そうに話しているけど……
「卵を落とした? でも、天族の卵はかなり硬いから落としたくらいじゃ割れないはずだよ?」
「でも……ハデスのあの慌てた声……かなりの事があったはずよ?」
「かなりの事……どうしよう。もし卵が割れたらどうなるの?」
「分からないわ。今までそんな話は聞いた事がないから……とにかく行ってくるわ」
お母様が慌てて外に空間移動したけど……
「よし! じゃあ、ぺるみはオレが抱っこで連れてってやるか!」
「え? 雪あん姉?」
抱っこで?
雪あん姉は力持ちだけど、わたしは重いから……
「しっかり掴まれ! ぺるみだけ部屋で待ってたら気になって仕方ねぇだろ?」
「うん! でも、大丈夫かな? わたし……重いよ?」
「ははは! オレは第三地区の奴らを守る為にこの身体を創ってもらったんだ。ぺるみも第三地区で暮らす『家族』だろ? もちろん卵もそうだ。皆家族だからな。その家族をオレが抱えられねぇはずがねぇだろ?」
「雪あん姉……うん! ありがとう! お願いします」
「任せろ!」
……!
うわあぁ!
すごい。
軽々抱っこしてくれたよ。
雪あん姉のムキムキの腕に抱き上げられると……
ぐふふ。
興奮してきたよ。
やっぱり、わたしは筋肉が好きなんだね。
雪あん姉は、かっこいいなぁ。
こんな素敵な大人になりたいよ。
「うぅ……眩しい……」
家から出ると……
今日も幸せの島は暑いね。
海風が気持ちいいけど出産で疲れ果てた身体には、かなり堪えるよ。
「ははは! もう昼だからな。今日も晴天だ! 赤ん坊達が卵から孵って大きくなったら『よく晴れた気持ちいい昼に産まれた』って話せるな!」
「……うん。皆……わたしが前を向けるようになるまで待っていてくれたんだね」
「ぺるみなら前を向けると信じてた。オレだけじゃねぇ。皆が信じてたんだ」
「皆が……? もしかして皆、わたしの赤ちゃんに魂がない事を知っていたの?」
「ベリアルは嘘をつけねぇからな。バレバレだった」
「全部知っていたのに黙って見守ってくれたの? わたしを信じて……わたしなら前を向けるって……」
嬉しくて……
申し訳なくて……
でも、心が温かい。
大切な存在に信じてもらえるって、こんなに幸せな気持ちになれるんだね。
 




