『最後はツルン』……か
「うぅぅ……痛いっ! 痛いよぉ!」
腰が砕けるうぅぅっ!
いきむって、これで合っているの?
「よし! 出てきた! もう一息だ!」
おばあちゃんが叫んでいるけど……
「出てきた!? 卵が出てきたの!? ……うぅぅ……痛ああぁぁいっ!」
「頑張れ! そのままツルンっだ!」
ツルン!?
無理無理無理!
絶対引っ掛かってる!
途中で引っ掛かっているんだよおっ!
「痛ああぁぁいっ!」
……!?
あ……
今の感じ……
もしかして産まれたの?
本当に最後はツルンだったよ……
「おおっ! こりゃ、かわいい卵だなぁ」
……?
え?
この声は……
「吉田のおじいちゃん!? ちょっと! 出ていったんじゃなかったの!?」
さっき、雪あん姉に担ぎ出されていたよね!?
しかも、ふんどし姿でわたしの足元にいるし!
ハデスでさえ頭の方にいるのに。
「ははは! 見てねぇ、見てねぇ。卵しか見てねぇから安心しろ。それに、群馬にいた頃はおむつを取り替えてやってただろ? あぁ……かわいいなぁ。ぺるぺるの髪の色みてぇに綺麗な卵だなぁ」
おむつの話はしないでよ!
でも……
「……わたしの髪の色?」
「白くも見えるけどキラキラ光る水面みてぇにも見える」
吉田のおじいちゃんは、そう言うけどわたしからは見えないよ。
かなり痛かったから大きいんだろうなぁ。
双子だけど卵はひとつなんだよね?
この痛みが一度で済んで良かった。
「今、卵を洗ってるからなぁ。少し待て……」
おばあちゃんが卵を洗ってくれているんだね。
すごく嬉しそうな声だ。
ハデスがわたしの手をしっかり握ったまま卵の方を見ているけど……
「ハデスは卵が見えた?」
「……あぁ。見えた……美しい卵だ。ペルセポネ……よく頑張ったな。よく頑張った。辛かっただろう?」
「……うん。でも……不思議だね。今は無事に卵を産めた事が嬉しくて痛みを感じないの」
「そうか……疲れただろう?」
「うん。明日は筋肉痛だね……」
「リリーが疲労回復に効く果物を持ってきてくれたらしい。後で食べるか? それとも、今にするか?」
「後にしようかな。えへへ。卵を抱っこしてから食べたいの」
「そうだな……」
ハデスがわたしの汗を拭きながら嬉しそうに微笑んでいる。
「ほれ、洗い終わったぞ? パパとママに抱っこしてもらおうなぁ」
おばあちゃんが布にくるんだ卵を手渡してくれたけど……
パパとママ……か。
嬉しいけど、少しくすぐったいよ。
「うわあ……」
想像していたより小さいかな?
でも……
この大きさの卵がどうやって出てきたんだろう。
はぁ……
腰が砕けそうなくらい痛いわけだよ。
それにしても本当にかわいい卵だ。
早速、親バカかな?
「愛らしい卵だ……」
ハデスが涙目になっている……?
魂がなくて死産になるはずだったから、ほっとしたのかな?