オケアノスとうさちゃんの想い
「バニラちゃんは……」
ベリアルが途中まで話してやめた?
「バニラちゃん? バニラちゃんがどうかしたの?」
話しにくい事なのかな?
「……うん。バニラちゃんはオケアノスと二人で赤ん坊に入ろうとしてたみたいなんだ」
「え?」
そうだったの?
「でも、聖獣王がそれは無理だって教えてくれたんだ」
「あ……うん。わたしも聞いたよ。ずっとわたしの中にいたオケアノスとは違って、バニラちゃんは別の生き物になったって……」
「それを知らされなかったらバニラちゃんは消滅してたんだな」
「……良かった。そうならなくて本当に良かったよ……」
「ぺるみは……オレが赤ん坊に入ったら消滅するって分かってたのか?」
「なんとなくだけどね……遥か昔、わたしの身体に入ろうとした魂が何百と消滅したらしいから……ベリアルには絶対にそうなって欲しくなかったの」
「……そうか」
「わたしは、うさちゃんとオケアノスの未来を奪ったの。……自分が憎いよ。ずっとわたしを守ってくれていたうさちゃんの最後の姿を……見て……」
ダメだ……
上手く言葉が出てこない。
倒れて……
動かなくなって……
そんなうさちゃんの姿を見て心が苦しくなったけど……
あれは全部わたしのせいなんだ。
全部わたしのせいなのに『心が苦しくなった』なんて言葉で片付けようとする自分が嫌になる。
わたしだけが幸せになっていいの?
本当にこれでいいの?
「ぺるみの事だから、オケアノスとうさちゃんを不幸にしたのに自分だけが幸せになっていいのかとか考えてるんだろ?」
「……え? どうして分かったの?」
「ずっと一緒にいたんだからお前が考えてる事くらい簡単に分かるさ」
「ベリアル……」
「ぺるみは寝てたから知らないだろうけど……ヨシダのじいちゃんの力でぺるみが寝てた時、オケアノスが出てきてな。『この事で苦しまなくていい。産まれてきた赤ん坊を全力で愛せと伝えて欲しい』って言ったんだ」
「オケアノスが……?」
「それと……うさちゃんも、ぺるみの赤ん坊になれて嬉しいって言ってた」
「うさちゃんが?」
「うん。うさちゃんも、オレと同じで親に愛された記憶がなかったからな。オケアノスに魔法石として創り出された時に何があったのかは分からないけど……親みたいなオケアノスは寝込んでて、すぐに亡くなったみたいだし。だから、両親に愛されたかったってずっと思ってたはずだ。オレはずっとずっと愛されたいって思ってたから……うさちゃんもそうじゃないかと思うんだ」
ベリアルがすごく辛そうに話している。
わたしも、月海だった時は両親がいなくて寂しかったからその気持ちがよく分かるよ。