ハデスは純粋で思いやりがあって優しいんだから
「ねぇ? お母様? わたしやっぱり、ルゥのおばあ様の所に行ってくるよ。ハデスはよく寝ているし……すぐ帰ってくるよ」
もしかしたらおばあ様が待っているかもしれないし。
それに、天族の姿になってからのハデスは眠りが深いのか一度眠るとしばらく目が覚めないんだよね。
「でもベリアルは第三地区に行ったし、そうね……お母様がヒヨコになって一緒に行くわ? ペルセポネは空間移動を始めたばかりだし、一日に何度もしたら危険よ?」
お母様の言う通りだね。
さっきは、たまたま上手くいっただけかもしれないし。
「ありがとう。お母様が来てくれたら心強いよ。やっぱり、ルゥのおばあ様には申し訳なくて、会ったら泣いちゃいそうだから」
「泣いてもいいのよ? おばあ様はルゥをとても愛していたわ? ペルセポネに戻ってもその気持ちは変わらないはずよ? お母様がルゥとペルセポネを愛しているようにね」
「うん。ありがとう。吉田のおじいちゃん、そこにいるんでしょ?」
魔族の皆も帰っちゃったし、さすがにハデスを一人にできないよ。
側にいてもらってもいいかな?
「ははは。気づいてたか」
「ハデスを見ていてもらってもいいかな?」
「ハデスちゃんは、かわいい孫だからなぁ。もちろんだ。それにしてもハデスちゃんは眠れるようになったんだなぁ」
「……? 眠れるようになった? 『じいじ』の時には確かに眠りが浅かったけど。眠ってはいたよ?」
「うーん。天界や冥界にいた頃はいろいろ抱え込んでなぁ。なかなか眠れなかったみてぇだったけど、ぺるぺるが側にいるようになってからは気持ちが落ち着いたんだろうなぁ。ぺるぺるはハデスちゃんを怖がらねぇし愛してくれるからなぁ」
「それ……まさか、ハデスは天界とか冥界にいた頃は眠れていなかったっていう事?」
「そうだなぁ」
「どうして?」
「ハデスちゃんは闇に近い力を持って産まれただろ? 父親の腹の中にいる間は良かったけど出てきてからは他の天族の奴らといろいろあってなぁ。まあ、ハデスちゃんは強いから面と向かっては言われねぇだろうけどなぁ。自分達と違う奴を仲間外れにしようとするなんてバカだよなぁ。同じ天族同士なのになぁ」
「そんな……じゃあハデスが天界に出入りしなくなったっていうのは……」
「そういう事も関係してるんだろうなぁ。冥界はハデスちゃんが頑張ったから穏やかな場所になっただろ? 悪口を言う奴もいねぇしなぁ。それに比べて天界は陰口やら嫉妬やらがすごいからなぁ」
「酷いよ……ハデスは不器用なだけで、純粋で思いやりがあってすごく優しいんだよ?」
「じいちゃんもそう思うぞ? ハデスちゃんは(ぺるぺるに手も出せねぇくらい)純粋で、(公にやると面倒だから暗殺する)思いやりがあって、(ぺるぺるにだけは)優しいからなぁ」
ん?
何か小声で話していたけど……?
よく聞こえなかったよ?
「ほら、早く行かねぇとルゥのばあちゃんが待ってるんだろ?」
「あぁ……そうだった。じゃあ行ってくるね」
なるべく早く帰ってくるからね?
待っててね、ハデス。