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同じ過ちは絶対に繰り返さないよ

「うぅ……」


 苦しい……

 お腹が苦しくて腰が砕けそうなくらい痛いよ。

 身体中に力が入って、確実に明日は筋肉痛だね。

 ていうより、今日中に産まれない可能性もあるよね?

 陣痛が始まってどれくらい経ったんだろう。

 少なくとも五時間は経っているかな?

 ん?

 じゃあ、もう今日は終わっているんじゃ……?

 今日が終わるなんて変かな?

 じゃあ……

 明日になったって言えばいいの……?

 そういえばさっき食べたクッキーは激辛だったよね。

 あれって誰が作ったクッキー……?

 ダメだ。

 痛みで答えが出ない……

 さっきからずっと同じ事を繰り返し考えているけど、今考えないといけない事じゃないよね?

 あ、痛みが治まった。

 はぁ……

 ずっとこれの繰り返しだ。

 

「ペルセポネ……辛いか?」


 ハデスが手を握りながら心配そうに話しかけてきたけど……


「うん……少し落ち着いたかな」


「そうか……オケアノスと子うさぎが、わたし達の子になるのだな……」


「……うん。二人が二人として生きる未来を奪って申し訳ないと思いながら……赤ちゃんが生きられる事は嬉しくて……複雑な気持ちだよ」


「そうだな。一度は諦めたが……やはり……生きて産まれてくれたら……嬉しい……な」


「どんな容姿でも、どんな力を持っていても……かわいいよね……」


 容姿が違うからっていう理由だけで虐げられてきた熊太郎とお花ちゃん、コットスと弟さん達……

 天族に見えないからって、捨てられたオケアノスと魚族長……

 その壮絶な過去を知った時は涙が止まらなかった。

 ハデスも闇に近い力を持って産まれたから、かなり苦労してきたんだよね。


 二度と同じ過ちを繰り返したらダメだよ。

 絶対に……

 絶対にダメだ!


「ああ。どんな容姿でも……どんな力を持っていても……わたしは子供達を愛し続ける」


 ハデスなら優しいパパになりそうだね。

 あ……

 そうだ。

 うさちゃんの想いを伝えないと……

 

「ハデス……うさちゃんがね?」


「ん……?」


「また、ハデスと貝殻拾いをしたいって言っていたよ……」


「……そうか」


「赤ちゃんが産まれてきたら……楽しい事をたくさんしたいな。それが思い出になって……わたし達家族の歴史になっていくの」


「家族の歴史……か。そうだな。オケアノスも子うさぎも苦しい過去を生きてきた。これからは、幸せな未来を与えよう。……いや、違うな。皆で共に幸せになろう。幸せは一方的に与えるものではないからな。愛しい存在がいれば、それだけで幸せなのだ。辛い事があっても愛しい者がいてくれるだけで未来は輝くものだ」


「そうだね。オケアノスとうさちゃんが今までの記憶を持ったまま産まれてくるのかは分からないけど……でも……わたしは永遠にオケアノスとうさちゃんに感謝し続けるよ」


「……そうだな」


 ハデスが優しく微笑みながらわたしの髪を撫でてくれている。

 優しい手だな……

 わたしとハデスの赤ちゃんにも、この穏やかな気持ちが伝わっているのかな?

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