覚悟
「ぺるみ……うさちゃんの身体は『ルゥ』と『じいじ』の間に寝かせてやろうなぁ」
おばあちゃんが悲しそうに話しているけど……
うさちゃんをルゥとじいじの間に寝かせる?
あぁ……
わたしのせいでうさちゃんは『うさちゃん』として生きられなくなったんだ……
「おばあちゃん……わたしのせいで……」
「うさちゃんが話した通りだ。これで終わりじゃねぇ。これから始まるんだ。ぺるみ……前を向け。もう、二人は元には戻れねぇんだ。二人の想いを受け止めてやれ」
二人の想いを受け止める……?
「……でも。……!?」
何!?
お腹が痛い!?
今まで感じた事のない痛みだ!
「ペルセポネ……陣痛が始まったようね。初産だし、双子だし……長引きそうだわ」
お母様が心配そうにわたしの額を触っている……
これが陣痛……?
痛い……
痛過ぎるよ……
産まれてくるまでずっと続くの?
「大丈夫だ。陣痛は数分おきにくるからなぁ。それが、だんだん狭まると産まれてくるんだ」
「おばあちゃん……うぅ……お腹のオケアノスとうさちゃんは苦しくない? 二人が苦しくないように、わたしができる事はある?」
「……腹の二人も今頃卵に入ってる頃だろうなぁ」
「卵に……? うぅ……わたしの赤ちゃんになってくれた二人も頑張っているんだね……わたしも頑張らないと……」
……でも……痛過ぎるよ……
こんなに痛いものなの?
「まだまだ序の口だ。これから、もっと苦しくなるぞ。でも、安心しろ。人間だと逆子の心配があるけど天族は卵だからなぁ。来るところまで来ればあとはツルっと出るだけだ!」
「ツルっと? ツルっと……あれ? 治まった?」
あんなに痛かったのに……
「それが、陣痛だ。さあ、先は長いからなぁ。今のうちに飲み食いしておけ。出産は体力勝負だ。この世界には帝王切開はねぇからなぁ。自力で産むしかねぇんだ」
「うぅ……分からない事ばかりで不安だよ」
「大丈夫だ。ばあちゃんもデメテルも付いてるからなぁ」
「……うん。わたし……頑張るよ。オケアノスとうさちゃんの為に頑張るよ……」
さっきまでは、うさちゃんとオケアノスに申し訳なくて悩んでいたけど……
おばあちゃんの言う通りだよ。
ここまで来たらもう引き返せないんだ。
今頃、二人も卵に入る為に頑張っているんだよね。
それなのにわたしが前に進めずにいたら二人を苦しめちゃうよ。
絶対無事に産むから。
卵から孵ったら世界一幸せな赤ちゃんにするから。
ハデスと二人で大切に大切に育てるから。
だから……
待っていてね。
オケアノスとうさちゃんが卵から孵るその時までお別れだけど……
その時が来たら……
産まれてきてくれてありがとうって抱きしめさせてね。
どんな容姿で産まれてきても……
闇の力を持っていたとしても関係ない。
生きて産まれてくれたら……
かわいい産声を上げてくれたら……
誰にも差別させない。
誰にも虐げさせたりしない。
もし、天族が子供達をそう扱うのならわたしがその愚かな考えを変えてみせる!
だから、安心して産まれてきてね。
二人が心から『幸せだ』って思える世界にするから。
二人が心から笑える世界にするから。
オケアノス……
寂しい思いはさせないよ。
ずっとずっと一緒にいるからね。
うさちゃん……
遥か昔からずっとわたしを守ってくれてありがとう。
今度はわたしがうさちゃんを守るからね。
二人のママとして今できるのは無事に出産する事……
頑張るから……
頑張るからね。
もう少しだけ待っていてね。
わたしのかわいい赤ちゃん……
絶対に幸せにするから。