表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1452/1484

当たり前に見える幸せは、当たり前なんかじゃないんだ

「シアワセニ、クラセ。スウセンネンマエ、セイジュウ、トシテ、ジガイ、シテ、オケアノスニ、ナッテカラモ、クルシミノ、ナカニ、イキツヅケタ。コンドコソ、シアワセニ、ナレ! ペルセポネ!」


 聖獣王が、心からぶつかってくれている。

 わたしの願い……

 それは……


「……わたし……わたし……赤ちゃんを元気に産んであげたい……毎日大好きって言って、髪を撫でて……お父様とハデスで赤ちゃんを取り合いして……それをお母様と笑いながら見ているの」


「……ソウカ」


「それで……赤ちゃんの一人が、女の子で……ハデスは絶対にお嫁にあげないって……言って……それで……」


「……ソレデ?」


「そんな、普通の……当たり前の幸せが欲しい……欲しいの……」


 苦しくて、声が震える……

 でも……

 やっぱり……

 わたしは赤ちゃんに生きて欲しい。


「ソレデイイ。ヨク、ガンバッタナ」


「……え?」


「ネガイハ、キキ、トドケタ」


「え? 願い……? 聖獣王?」


「オマエノ、ノゾミヲ、カナエヨウ」


「……? それって?」


「……キタカ」


「……? 来たか? 何が?」


「ベリアルが眠りながらしっかり服を握って、離してくれなくてなぁ」


 この声は……

 吉田のおじいちゃん?

 ……あれ?

 急に……

 眠く……


「イマハ、ネムレ。オノレノ、ヨクハ、カナエ、ラレナイ、カラナ」


 己の欲は叶えられない?

 それって、真実の口の力の事?


「すまねぇなぁ。もう限界なんだ。これ以上ぺるぺるの腹の子の時を止める事はできねぇ」


 おじいちゃんが、わたしの赤ちゃんの時を止めていたの?

 産まれてくるのを遅らせる為に?

 だからお腹が膨らんでこなかったんだ。


「メガ、サメタラ、シュッサンダ。スゴク、イタイゾ。フタリ、ハイッタ、タマゴ、ダカラナ」


「すぐに腹が膨らみ始めるからなぁ。妊娠線は後で陽太に消してもらえ」


 妊娠線?

 何それ?

 ……うぅ。

 ダメだ。

 意識が遠退く……

 目が覚めたら出産?

 すごく痛い?

 でも……

 本当にわたしとハデスの赤ちゃんが無事に産まれてくるの?

 

 卵を産んで、その卵を大切に温めて……

 しばらくしたら自分で殻を割って出てくるんだよね?

 

 死産になるって覚悟していたけど……

 うさちゃんとオケアノスの未来を奪ってもいいの?

 わたしが幸せになる為に二人の幸せを奪ってもいいの?

 まだ二人ときちんと話せていないのに……

 本人がいないのに勝手に話を進めるのはダメだよ。

 そういえば、オケアノスは最近『眠い』って言って話しかけてこなかったよね。

 うさちゃんはずっと眠っているし……

 本当にわたしの赤ちゃんになりたいと思っているのかも分からない。


 きちんと話さないと……

 でも、こんな身勝手な話をするのは……

 

 ……ダメだ。

 頭がボーっとして何も考えられない。

 このまま出産する事になったらオケアノスとうさちゃんと何も話せない。

 眠ったらダメ。

 眠ったらダメだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ