うさちゃんが聖獣王? (5)
赤ちゃんが卵に入るまで魂がなくて、母親の身体から出てきた後に……
卵に入って温められている時に聖獣の魂が入ると、どうなるんだろう?
卵の中にいる赤ちゃんは天族の容姿なのかな?
それとも魔族みたいな容姿?
もし、この『人間と魔族の世界』で人間の魂が入ったら?
あれ?
でも、わたしは魔族みたいな容姿のオケアノスの魂が入ったのに天族の容姿だったんだよね?
わたしの魂が入ったのは卵になってからだったの?
うーん……
混乱してきた。
天族の赤ちゃんには天族の魂しか入らないと思っていたけど違うんだね。
天族は自害すると隠し部屋にある光に神力が取り込まれる。
そして身体は消滅して、魂は次に入る身体を探す。
魂には感情や過去の記憶がなくて……
でも、本能的に強い身体を欲しがる。
そう聞いているけど……
うさちゃんにも過去の記憶がないんだよね?
身体はうさちゃんのものらしいから自害したんじゃないはず。
冥界にも亡くなった聖獣達がいるけど……
うーん……
自害以外で亡くなったのならすぐに冥界に行く……
うさちゃんとして『人間と魔族の世界』や天界で暮らしていたんだから亡くなってはいないんだよね?
ただ記憶を失っただけ?
額についている魔法石からきしむ音がしている?
うーん……
分からない事ばかりだよ。
「ぺるぺる……」
吉田のおじいちゃんも複雑そうな表情をしている。
「おじいちゃん……また一歩前に進んだね」
「そうだなぁ。そして、また新たな壁にぶち当たった」
「……うん」
「とりあえず、じいちゃんはお月ちゃんに今の話をしてくる。ベリアルとゴンザレスは連れていって寝かしてやろうなぁ」
「え? ベリアルとゴンザレス? ……あ」
わたしに抱っこされているベリアルが気持ち良さそうに眠っている?
ゴンザレスもおじいちゃんの腕の中で寝ているね。
「色々聞かれねぇように寝てもらったんだ。今の話も誰にも聞かれねぇようにしておいた」
「……そう」
さすが、おじいちゃんだね。
「ぺるぺるは聖獣王と屋台でお菓子でも食えばいい。なかなか人間の町には来られねぇからなぁ」
「……うん」
「ぺるぺるには、何も考えねぇ時間が必要だ。また知恵熱を出しちまうぞ?」
「おじいちゃん……」
また気を遣わせちゃったね。
「妊婦さんなんだからなぁ。穏やかに過ごさねぇとダメだぞ?」
穏やかに……か。
そうだね。
お腹の赤ちゃんに魂がないとしても、たっぷりの愛情で包んであげないと。