超絶かわいいヒヨコのベリアル、初めてお使いをする(3)
今回はヒヨコの姿のベリアルが主役です。
「ヒヨコ様……泣かないでください。ああ……どうしたら……」
ばあちゃんも泣き出しそうだ。
オレがバカなせいで……
ごめん。
「全てわたしのせいです。わたしが女神様の事を尋ねなければこんな事には……」
じいちゃんまで悲しそうな顔をしている。
「オレ……もう家に帰れないから……誰もいない所で一人で暮らすよ。もう行くよ……」
ひとりぼっちには慣れてるから。
第三地区に来てからが幸せ過ぎたんだ。
オレはずっと一人だったから。
寂しくなんかない。
寂しくなんか……
どうして涙が止まらないんだよ。
「うわあぁ! 眩しい!」
「目を閉じて!」
「ヒヨコ様! 行かないでください!」
え?
確かに空間移動の光で眩しいけどオレじゃないぞ?
まさか、ぺるみが迎えに来てくれた?
それとも天界の奴らがオレを捕らえに来たのか?
「久しぶりね……清らかな人間よ……」
……!?
デメテル!?
どうして?
「あぁ……女神様……」
じいちゃん……
膝から崩れ落ちたな。
ずっと会いたかった女神が現れたからか。
膝が痛いって言っていたけど平気なのか?
「聖女のおばあ様……お元気そうで嬉しいわ?」
「わたくしをご存知なのですか?」
「もちろんよ……聖女には無理をさせてしまい申し訳なかったわ。辛かったでしょう?」
「神様に新しい身体を授けられたと、公爵から聞きました。きっと、大切な人達と笑顔で暮らしているはずです」
「そうね。近いうちに会いに来るはずよ。その時は抱きしめてあげて欲しいわ?」
「はい。身体が変わっても、わたくしのかわいい孫に変わりありません」
「そうね。聖女はおばあ様に会える事を楽しみにしていたわ?」
デメテル?
オレを迎えに来たのか?
どうして?
「あの……女神様……わたしを覚えて……あの……」
じいちゃんが震えながらデメテルに話しかけている。
さっきまでとは全然違うな。
「もちろんよ。あの時は国を捨てさせてしまい申し訳なかったわ。辛かったでしょう?」
「そんな! わたしは間違った道に進んだとは思いません。いつかまた女神様にお会いできたら……その時は胸を張っていられるようにと……」
「あなたは立派よ? あなたのお陰で聖女が誕生できたの。あなたがいなければ、この世界の魔素が祓われる事はなかったわ?」
「女神様……あぁ……またお会いできた事に感謝します」
「ヒヨコは連れて行くわ。大切な家族が家で待っているわよ?」
「え? でも、オレは……」
「よく頑張ったわね。一人でお使いをしている姿は立派だったわ」
「うぅ……でも……」
「さぁ行きましょう?」
こうしてオレは幸せの島に帰ってきた。
デメテルは赦してくれたけど……
食べ物につられてデメテルの事を話しちゃったし……
追い出されるよな……
皆の事が大好きなのに。
「ベリアル!」
ぺるみ?
もう戻っていたのか?
あ……
いつもよりほんの少しだけ強く抱きしめられると、涙が止まらない。
「ごめん……ごめん。オレ、女神に会ったって話しちゃって……」
「大丈夫だよ? ベリアル……ベリアルはわたしとハデスの息子なんだよ? どこにも行かせないからね?」
「でも……オレは……」
「大丈夫だから、ね? それに……もしベリアルがどこかに隠れちゃってもわたしは絶対捜しに行くよ? だってベリアルの事が大好きだから」
「ぺるみ……皆……ごめん……ごめんなさい……」
「ふふ。謝れて偉いね。良い子だね。かわいいベリアル。わたしの宝物さん」
「宝物さん?」
「うん。お父様がわたしに言ってくれるの。『宝物さん』って」
「オレも『宝物さん』か? 大切か?」
「もちろんだよ! ベリアルがいない生活なんてあり得ないよ!」
ぺるみ……
誰かに大切って言われる事がこんなに心地いいなんて、知らなかった。
オレ……ずっとこのあったかい場所にいてもいいのかな?
いたいよ。
ずっとここにいたいよ。