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それぞれの幸せの先に

「ふふ。今頃ベリアルはリリーちゃんと星を見ているのかな?」


 まさか、ベリアルがパートナーを見つけてくるなんて。

 いつまでも、赤ちゃんのピヨピヨピヨたんじゃないんだね。

 ベリアルとリリーちゃんが島に行ってから、皆と広場でお茶を飲んでいるんだけど……

 第三地区にベリアルがいないなんて、やっぱり寂しいよ。


「リリーは良い子だったなぁ」  

「そうだなぁ。優しくて、ベリアルを好きな気持ちが伝わってきたなぁ」

「ベリアルがいねぇと寂しいけど……子供はいつかは離れていくもんだからなぁ」

「これからは、お月ちゃんもバニラちゃんも寂しくなるなぁ」


 第三地区の皆が話しているけど……

 そうだよね。

 おばあちゃんとバニラちゃんは、わたしよりも寂しいはずだよ。


「ぺるぺるは水晶でベリアルを覗き見しねぇんか?」


 吉田のおじいちゃんが話しかけてきたね。


「やめておくよ。ほら、チューとかしてたらアレだし」


「そうか、そうか。ぺるぺるの事だからてっきり覗き見すると思ったけど……そういう気は遣えるんだなぁ」


「わたしだって、さすがにチューしているところは遠慮するよ」


「そうか? じいちゃんは見てぇけどなぁ。あのベリアルが初ちゅうするところ……くうぅ! つま先立ちになって背伸びしてあのつぶらな瞳を閉じてちゅうを待つ……こりゃ、堪らねぇなぁ」


「……!? ベリアルがつま先立ちになって背伸びしてつぶらな瞳を閉じてチューを待つ!? こりゃ、聖人ぶっている場合じゃないよ! おじいちゃん! 早く早く! 水晶を出してよ! 早くしないと見逃しちゃうよ!」


「ぷはっ! ぺるぺるは変態さんだなぁ」


「だってベリアルのそんな姿を見逃すわけにはいかないでしょ!?」


「ははは! でも……残念だなぁ」


「残念? まさか、もうチューしちゃったの!?」


「そうじゃねぇさ。ベリアルは毎日早く寝てるからなぁ」


「え? まさか、もう寝ているなんて事はないよね!?」


「結局ベリアルはピヨピヨピヨたんって事だなぁ。まぁ、リリーはベリアルの赤ん坊みてぇに純粋なところが好きみてぇだし。いいんじゃねぇか?」


「リリーちゃんはベリアルとチューしたいとか思わないのかな?」


「うーん……リリーは、ずっとひとりぼっちで寂しかったんだ。だから、裏表がねぇベリアルと一緒にいるだけで幸せなんだろうなぁ」


「そっか……『二人らしいパートナー』になっていくんだね」


「リリーもかなりの甘えん坊の構ってちゃんだからなぁ」


「そうなの? ベリアルと同じだね」


「きっと上手くいくさ。リリーにもベリアルにも幸せになって欲しいんだ。二人とも家族がいなくて寂しい思いをしてきたからなぁ」


「皆が幸せへの道を進んでいるんだね。いつまでも皆一緒に第三地区にいるなんていう事はないのかもしれない……わたしも幸せの島を出て冥界に行ったし、ウェアウルフのお兄ちゃんも雪あんねぇと二人だけの島に引っ越したし……」


「そうだなぁ。『いつまでもずっと同じ』なんて事はねぇんだろうなぁ」


 いつまでもずっと同じなんて事はない……か。

 幸せな事のはずなのに寂しい気持ちにもなるね。

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