ベリアル、昔の自分を思い出してリリーと重ねる
今回はベリアルが主役です。
楽しい時間は、あっという間に過ぎるんだな。
もう六時半くらいかな?
昨日水浴びしてた鳥が起きたのか?
かわいい鳴き声が聞こえてきた。
今日もいい天気になりそうだ。
「そろそろ……帰る?」
リリーが少し寂しそうに話しかけてきたけど……
「え? ……あ、いや……でも……」
リリーを独りにしたくないよ。
「わたしは大丈夫。昨日話した『変な奴』以外にもかわいいフワフワな小さい子も来てくれるから」
「フワフワな小さい子?」
それって……
まさか……
リリーの恋人!?
「え? あ、いや。えっと……女の子でね? 花冠を作って……家族に供えているんだって」
「……それって」
まさか、バニラちゃんじゃないよな?
バニラちゃんも毎日花冠を作ってお供えしてるけど……
しかもフワフワだし。
うーん?
「ベリアル……まだ、気づかない?」
「……え? 何を?」
「わたしは……オケアノスの子孫なの」
「……え? オケアノスの? ……ええ!?」
「わたしの母さんは魔族のパートナーになってね。それでわたしが産まれたの。あれはまだ子孫繁栄の実がなくても他種族の子を身籠れた時で……父さんと母さんはすごく仲良しだったんだよ」
そうか。
それで銀の髪に青い瞳だったんだな。
「じゃあ……やっぱりバニラちゃんがこの島に?」
「うん。バニラちゃんも第三地区に来て一緒に暮らそうって言ってくれるんだけど……」
「怖いんだな。顔を見ると何を考えてるか占いで分かるから……」
あ……
もしかして、オレがリリーの事を何度も『かわいい』って思ったから真っ赤になってたのか?
「それは父さんの力を受け継いだの……父さんは……凄く強い種族でね……」
「そうか。……あのさ、リリー?」
「……ん?」
「オレが……この島にずっといたら……迷惑か?」
「……え?」
「あ、いや。その……女の子独りじゃ心配だから……」
それに、オレ自身がリリーと離れたくないんだ。
「……大丈夫。わたし、強いから。今までだって問題なかったし」
「……でも」
やっぱり心配だよ。
「大丈夫。もう行って?」
「でも……まだモモを食べてない」
「あ……」
「一緒に食べよう? いっぱい持ってきたんだ!」
「……ベリアルは一緒に第三地区に行こうって言わないんだね」
「それは……リリーが嫌がると思うから……」
「ベリアル……?」
「オレ達はよく似てるから……オレには分かるんだ。リリーはこの島にいる事で心が守られてるんだよな。オレも光と闇が入り混じる空間にいた時……心が楽だったんだ。誰からも虐げられなくて……心が傷つかなかった……」
あの空間にいれば誰かを羨む事も傷つけられて泣く事もなかった。
リリーは、あの時のオレみたいだ。
寂しくて苦しくて……
でも誰もいない空間にいる事で心がすごく穏やかで……
そして孤独で心が……
身体の全てが空っぽだった。
頭も心も身体も……
全部全部空っぽだったんだ。