ベリアル、ワイルドな男に憧れる
今回はベリアルが主役です。
「こ……恋!? そんなんじゃないよ! ただ……その……えっと……」
恥ずかしくて何も言えない……
それに、これは恋じゃなくて友達に会いに行くだけなんだ。
ベリス王にちゃんと説明しないと!
「恥ずかしがらなくても大丈夫です。そうですか、そうですか。あのベリアルが恋を……では、これを差し上げましょう」
ベリス王が袋を手渡してきたけど……
「え? 『これ』ってなんだ?」
「ワイルドに見える帽子ですよ」
「ワイルドに見える帽子?」
「はい。試作品ですが、特別にどうぞ」
「うわあぁ! ありがとう!」
被ってみたけど……
うん。
鏡に映るオレはいつもよりワイルドだ!
「ぷはっ!」
「(もう! 静かに!)」
「(我慢できなくてなぁ……)」
ん?
やっぱり何か聞こえてくるような?
「おや? (あんな所に隠れて何を?)」
ベリス王が少し離れた場所を見て何か呟いたけど……
「ベリス王? どうかしたか?」
「あぁ。いえ。お似合いですよ。急がなくてよろしいのですか?」
え?
急ぐ?
そうだ。
リリーが待ってるんだった。
「しまった! 急がないと! ベリス王、ありがとう」
モモが入ったバスケットも持ったし。
よし!
出発だ!
リリーは起きてるかな?
昨日と違うワイルドなオレを見てどう思うかな?
慌てリリー島まで空間移動すると……
「あ……ベリアル」
リリーだ!
果物の世話をしてたんだな。
朝からかわいいな……
って!
そうじゃなくて!
「おはよう。リリー」
ちょっとワイルドなオレに気づいてくれたかな?
「……えっと……ぷっ……」
ん?
笑いを我慢してるみたいに見えるけど……
まさか帽子が似合ってないとか?
「……あの……リリー?」
「あ、いや。素敵な帽子だね。良く似合っているよ」
「そうか? えへへ」
良かった……
似合ってないかと思った。
「その帽子も素敵だけど……こっちに来て。花冠を作ってあげる」
「花冠……?」
リリーがオレを抱っこした!?
うわあぁ……
甘い匂い……
温かくて柔らかくて……
ドキドキする。
「遥か昔ね、おじいちゃんが母さんに花冠を作ってくれたらしいの」
「へぇ。そうなのか」
「わたしは会った記憶が無いんだけどね」
「優しいじいちゃんだったんだろうな」
「そうみたい……」
ん?
なんだろう?
「リリーは……昨日と話し方が違うような?」
「え? ああ。そうだね。これが本当のわたしなの。島に女の独り暮らしだから、強がって見くびられないようにしていたんだよ」
強がってた?
やっぱり女の子が独りで暮らすのは大変なんだな。