ベリアルとリリー島の魔族(1)
今回はベリアルが主役です。
うぅ……
偉そうに『一人で頑張る』とか言ったけど……
やっぱり怖いよ。
王だったグリフォンを手こずらせた魔族から果物をもらえるのかな。
はぁ……
怖いけど、ぺるみの為に頑張らないと。
空間移動でリリー島の波打ち際に着いたけど……
すごいなぁ。
綺麗に整備された庭園みたいだ。
十の形に煉瓦が敷いてある道の真ん中に小さめの噴水が見える。
小鳥が水を飲んだり水浴びをしていてかわいいなぁ。
煉瓦がない場所には背の高い木が等間隔にあって、見た事ない果物がいっぱいなっている。
ん?
奥の方には……
イチゴかな?
ブルーベリーか?
他にも野菜が植えてある小さな畑みたいなものも見える。
野菜を食べる魔族なのか?
その隣には小さい家もある。
煉瓦でできた家の煙突からは煙が出ている。
絵本に出てきそうなかわいい家だ。
小鳥のさえずり……
キラキラと輝く噴水……
すごく素敵な場所だ。
「おい! お前! ここで何をしている」
……!?
すごく怖い声が背後から聞こえたけど……
オレに言ったんだよな?
うぅ……
きっとすごい大男で毛むくじゃらで牙とかが……
でも、ぺるみの為に頑張るって決めたんだ!
振り返ってちゃんと目を見て挨拶するぞ!
「……オレは……え?」
想像とは全然違う?
これって人間なんじゃ……
それに、ルゥに似てる?
銀の髪に青い瞳のすごくかわいい女の子だ。
でも、頭に小さい角みたいな物が生えてるな。
「……? ヒヨコ? にしては大きいな。魔族なのか? 気配が違うが」
「……オレはベリアルだ。リリー島にある栄養のある果物をもらいに来た!」
あ……
『こんにちは』って言い忘れた……
「お前がベリアル……? 栄養のある果物……?」
「あ、ごめん。こんにちは! 挨拶を忘れちゃった」
「挨拶? ……栄養って、誰か体調でも悪いのか?」
「え? あ……うん。それが……恩人が妊娠してて、でも……つわりで食欲がなくて……でも果物なら食べられそうだから……それで……」
「……恩人?」
「うん。大切な恩人なんだ。そいつに会ったからオレは幸せになれたんだ」
「……へぇ。まぁ、いい。だが……悪いが果物はあげられない」
「……え? どうして?」
「わたしと勝負して勝てたら、くれてやらない事もない」
「本当か!? でも勝負? オレ……痛いのは嫌いなんだ」
「誰も殴り合いをしろなんて言ってないさ」
「え? じゃあ何をして勝負するんだ?」
「うーん……お前は弱そうだからな。この前来たグリフォンとは力比べをしたんだが……それだとかわいそうだ」
「かわいそう?」
この魔族、本当は優しいのか?




