ベリアルとこたつと吉田のおじいちゃん(1)
今回はベリアルが主役です。
ぺるみは妊娠してたのか。
全然気づかなかった。
しかも、赤ん坊に魂がないなんて……
「はぁ……」
ヨシダのじいちゃんの家のこたつに入りながら、ため息をつく。
卵から孵らない事が分かってる赤ん坊を産まないといけないなんて辛いだろうな。
大きくなっていくお腹……
毎日毎日、赤ん坊の事が大好きっていう気持ちが増えてくのに……
死産だなんて……
オレはバカだ。
『ぺるみとハデスの赤ん坊は絶対無事に産まれてくる』なんて言っちゃったよ。
これからどうなるんだろう。
このまま魂が見つからなかったら双子の赤ん坊は死産になるんだ。
ばあちゃんは諦めてたみたいだけど、じいちゃんなら何か考えがあるかもしれない。
そういえば、ハデスを迎えに行ってから姿が見えないけどどこに行ったんだ?
じいちゃんは、ぺるみが妊娠してる事に気づいてるみたいだったよな。
でも、喜んでたみたいだし魂がない事は知らないのか?
じいちゃん、早く帰ってこないかな。
「んん? ベリアルはどうしたんだ?」
あ!
じいちゃんが帰ってきた!
「じいちゃん! ぺるみが妊娠してて、それで……それで……」
なんて話したらいいんだ?
言葉が上手く出てこないよ。
「……さっき、お月ちゃんから聞いた。まさか、魂がないなんてなぁ」
じいちゃんが話しながらこたつに入ってきた。
やっぱり、さっきは魂がない事を知らなかったんだな。
あ……
じいちゃんの足がオレのかわいい足に当たった。
さっきまでは一人で寂しかったけど、じいちゃんが来てくれたから心が温かくなったよ。
「じいちゃん……なんとかならないか?」
「……ぺるぺるは誰かの魂を入れ込むのを嫌がるはずだ。その事で、ずっと苦しんできたからなぁ」
「自然に魂が入る事はないのか?」
「じいちゃんも甘く考えてたみてぇだ。自然には……無理……だろうなぁ」
「そんな! オレ……嫌だよ。ぺるみが悲しむ姿なんて見たくないよ!」
「じいちゃんも同じ気持ちだけどなぁ……ぺるぺるとハデスちゃんの子の身体に入れる魂なんて簡単には……」
ぺるみとハデスが強過ぎるからって事だよな?
だったら……
「……じいちゃん?」
「んん? なんだ?」
「こっそり……オレの魂をぺるみの赤ん坊の中に入れたいんだ」
「……ベリアル?」
「そうすれば双子の内の一人は助かるだろ?」
一人だけでも助かれば……
「……それをぺるぺるが喜ぶと思うんか?」
「だって……オレはぺるみに助けてもらってばかりなのに……何も返せてなくて……」
オレにできるのは、これくらいしか……
「なぁ、ベリアル……これはぺるぺるとハデスちゃんが決めた事なんだ。自然に魂が入らなけりゃ諦めるってなぁ」
「……そんなの……本当は違うって……じいちゃんは分かってるだろ? ぺるみもハデスも赤ん坊を諦めたくないんだ!」
「……ベリアル」
「じいちゃん……お願いだよ……オレは……ぺるみが泣くなんて嫌なんだよ」
「ベリアル……じいちゃんだって諦めたくねぇさ。赤ん坊に入れる魂が自然に見つかって、元気に産まれてくる可能性はゼロじゃねぇんだ」
「そんな気長に待てる状況じゃないだろ! あっという間に卵が産まれてくるんだ。ぺるみの神力は強いからすぐに……だから……急がないと……」
「魂は……」
魂は……?
じいちゃんが何かを言いかけてやめた?
すごく険しい顔をしてる……