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覚悟と突きつけられた現実(4)

今回はハデスが主役です。

 天界で苦しみ続けていたベリアルは、この第三地区でやっと幸せになれたのだ。

 その幸せを奪うのは……


「ベリアル……ありがとう……」


 この声は……

 ペルセポネ……

 今の話を聞いていたのか?

 

「ぺるみ……聞いてたのか? えっと……その……」


 ベリアルが気まずそうにしている。


「桃のヨーグルトを食べようかと思って……」


「ヨーグルト? あ……そうか。あの……今の話……」


「うん。聞いていたよ。でも……それはダメだよ」


 やはり、ペルセポネは赤ん坊に無理矢理魂を入れる事を拒むのだな。

 自分自身がその事で苦しんできたから……


「ぺるみ! このままじゃ、お腹の赤ん坊が……死産……するんだぞ?」


「わたしが幸せになる為に誰かを巻き込むのはダメだよ。誰かの幸せを奪うのは違うから」


「そんな事、言ってる場合じゃないだろ!? 親の神力が強ければあっという間に卵になって産まれてくるんだぞ!? のんびりしてたら……間に合わない……」


「ハデスとも話していたの。覚悟はしていたから。もし……普通に産まれてきたら……運が良いんだって……わたしとハデスの赤ちゃんは……強過ぎるから魂が無いんだろうなって……」


「だからオレが!」


「ベリアル……バニラちゃんを悲しませないで? バニラちゃんは、ベリアルをかわいがれるようになったって喜んでいるんだよ? ゴンザレスとスーたんだって悲しむよ」


「ぺるみ……」


「待ってみるよ。もしかしたら……卵から孵るまでに魂が入るかもしれないし……死産だとしても……最後まで……愛を注ぎたい……」


「でも……」


「……ありがとう」


「……え?」


「わたしを悲しませないように考えてくれてありがとう」


「ぺるみ……後悔しないか? オレが赤ん坊に入れば……赤ん坊を抱きしめられるのに……このままじゃ……卵しか抱きしめられないんだぞ?」


「この話は……もうおしまい。お腹の赤ちゃんに魂が無くても……こんな話は聞かせたくないの。だから……元気に産まれてくると思って過ごしたいの」


「ぺるみ……」


 ベリアルが辛そうにしているが……

 ペルセポネの気持ちは揺らがないようだ。


「……そうだな。ペルセポネ……産まれてきたら卵の我が子を抱きしめて温めよう。卵から出てこなくても……愛しい我が子に変わりはない。ずっとずっと抱きしめていよう……」


 わたしとペルセポネの元に来てくれた子に愛を注ごう。

 わたしにできる事はそれしかないのだから。


「うん。……不思議だね。わたしのお腹の中に赤ちゃんがいるなんて……」


「……そうだな。きっと愛らしい卵が産まれてくるだろう」


 これでいい。

 これでいいのだ。

 一番辛いのはペルセポネなのだから。


 多くの命を奪ってきたわたしに、罰を与えられているのだろうか。

 そうだとしたら、常に真っ直ぐ生きてきたペルセポネを不幸にしているのはわたしなのではないか?

 もし、ペルセポネのお腹の赤ん坊がわたしとの子でなければ魂が入って普通に産まれてきたのかもしれない。

 

 はぁ……

 こんな風に考えてはいけないな。

 きっとペルセポネも同じように考えているはずだ。

 わたしが自分を責めているように、ペルセポネも自分自身を責めているに違いない。

 わたし達はよく似ているからな。


 これから先、わたし達に子が授からないとしても……

 わたしとペルセポネは互いに支え合い幸せに暮らしていけるはずだ。

 だからこそ……

 ペルセポネのお腹の中にいるわたし達の子を大切にしよう。

 これ以上ないほど愛を注ぎ、わたし達の元に来てくれた事に感謝しながら毎日愛を伝えよう。 

 わたしには、それしかできないのだから……

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