覚悟と突きつけられた現実(3)
今回はハデスが主役です。
「……ペルセポネらしいな。優しい考えだ」
愚かな天界の使者を生かしたいとは……
「そうでもねぇけどなぁ。冥界をリゾート地にしようとしてる天族の弱みを握って、二度とそんな事を言わせねぇように準備してるんだ」
おばあさんが呆れ顔で話しているが……
「弱みを握る?」
「そうだ。そのうち天界でぺるみに勝てる奴はいなくなるだろうなぁ」
「どうやって……?」
「んん? ほれ、ブラックドラゴンのノートがあっただろ? あれを譲り受けたんだ。それの証拠集めをしてる最中でなぁ」
「……やはり……ペルセポネは素敵な女性だ」
「素敵……か? 弱みを握るのがか?」
おばあさんが尋ねてきたが……
「わたしのやり方とは、まるで違う」
血を流さずに大切な物を守る……か。
気に入らなければ殺してきたわたしとは大違いだ。
「ハデスちゃんのやり方も悪くはねぇさ。暗殺の証拠を残さねぇように上手くやってるだろ? それに、改心しねぇ奴は何回も悪さをするもんだ。誰かが終わりにしなけりゃ、そいつに傷つけられる被害者は増えるしなぁ」
「ペルセポネは上手くやれるだろうか。天族に傷つけられないだろうか」
「大丈夫だ。信じて待てばいい。ぺるみは悪い奴を懲らしめるのが上手いからなぁ」
「敵だったウェアウルフやグリフォンを兄と呼ぶようになったように……冥界をリゾート地にしようとする天族とも仲良くなる……と?」
「うーん……天族はずる賢いからなぁ。純粋な魔族とは違うだろう。ぺるみもそれくらいは知ってるさ。二度とぺるみに逆らえなくなるようにしっかり調教するんじゃねぇか?」
「わたしは、知らぬ振りをした方が……?」
「そうだなぁ。ぺるみは冥界の一員だ。信じてやらせてみようなぁ」
「……おばあさん。わたしはどうしたら……? わたしとペルセポネの子を……死産にはしたくない……だが……魂は見つかりそうにない……」
「……流れに身を任せるしかねぇ。これから先、また妊娠したとしても魂が見つかる事はねぇだろう。ハデスちゃん……辛いだろうが……何もできねぇばあちゃんを赦してくれ。……ガイアなのに……ガイアなのに……かわいいぺるみの為に何もできねぇなんて……ばあちゃんは……なんて無力なんだ……」
「おばあさん……そうだ。魂……! わたしの魂を赤ん坊に……」
わたしの魂ならきっと……
「ハデスちゃん……赤ん坊を父親のいねぇ子にするつもりなんか?」
父親のいない子……?
わたしは子を抱きしめられないのか……
だが……
「……それで、赤ん坊が無事に産まれてくるのなら……」
「ダメだ。そんな事をすればぺるみが自分を責め続ける事になる。ハデスちゃんなら分かるだろ?」
それはそうだが……
「……なんとか……なんとかして……赤ん坊を……」
死産にだけはしたくない……
「ハデス……オレの魂を使ってくれ」
ベリアルが真剣な表情で話しかけてきた……?
「ベリアル?」
「オレは天族だし強いんだ! しかも、元はオケアノスだったんだぞ! オレならぺるみの子の身体に入れるはずだ!」
「……ベリアル」
ベリアルがわたしとペルセポネの子に……?
確かにペルセポネはベリアルを溺愛しているが……