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覚悟と突きつけられた現実(2)

今回はハデスが主役です。

「赤ん坊が卵から孵る前に二人分の魂を見つけるのは不可能に近い。普通の天族とは訳が違うんだ。ぺるみは無限に近い神力を持っている。その子の身体に入れる魂なんて……」


 おばあさんは、わたしとペルセポネの子を諦めたのか……

 わたしとペルセポネの……

 まだ見ぬ我が子……


「……不可能……? わたしと……ペルセポネの子は……あぁ……」


 覚悟はしていた……

 していたつもりだったが……

 こんな……

 こんなにも……

 心が痛い……


「……ハデス」


 デメテルがわたしの頬を拭った?

 なぜ?

 あ……

 ……涙?

 わたしは……

 泣いているのか?

 デメテルも涙が止まらないようだ……


「……ペルセポネにはまだ話さないでくれ。まだ……こんな……残酷な事は……聞かせたくない」


 少し……

 ほんの少しだけでもいい。

 先に延ばしたい。

 身重のペルセポネにこんな残酷な現実を知らせたくない。


「……いつまでも隠しきれないわ。わたしだって話したくない……かわいいペルセポネの苦しむ顔なんて見たくない……でも……」


 デメテルの瞳から涙が流れ続けている。

 ペルセポネによく似た瞳……

 ペルセポネもこんな風に泣くのか……

 嫌だ……

 そんな姿は見たくない。


 ……あぁ。

 違う……のか?

 この話を先延ばしにしたいのは『わたし』が涙を流すペルセポネを見る事が辛いからなのか?

 こんな時に……

 なんて身勝手なのだ。

 ……わたしは愚かだ。

 ペルセポネの母親であるデメテルも辛いというのに……

 赤ん坊の父親のわたしがこんな風で、どうやってペルセポネを支えるのだ?


「あぁ……すまない……すまない……心を落ち着けてくる……こんな顔をペルセポネに見せるわけにはいかない……」


「……分かったわ。ハデス……何か方法を考えましょう。ペルセポネだったらそうするはずよ。何があっても諦めないのがペルセポネだから……」


「……デメテル。そうだな。……! そうだ! 冥界……冥界にいる亡者……もしかしたら赤ん坊に入れる魂がいるかもしれない」


 早速、今から行って……


「……ハデスちゃん……それは許されねぇ」


 おばあさん?

 今、許されないと言ったのか?

 

「許されない……とは?」


「冥界にいる亡者は冥界から出る事は許されねぇ。冥王のハデスちゃんがそれをしたら……冥王では、いられなくなるはずだ」


「……冥王でいられなくなってもいい! わたしとペルセポネの子が無事に産まれてくればそれで……」


「本当にそれでいいんか? ハデスちゃんは知らねぇだろうけどなぁ……愚かな天族が冥界をリゾート地にしようとしてるんだ。ハデスちゃんがいなくなればすぐにそうなっちまうぞ?」


「冥界をリゾート地に!?」


 なんて愚かな!

 薄暗く酷い場所だった冥界を穏やかで過ごしやすくする為にどれほど苦労したか……

 それに、そんな事になればタルタロスの父上に害が及ぶ可能性が……


「ぺるみはそれを阻止する為に色々動き回ってるんだ」


「……ペルセポネは知っていたのか?」


「ハデスちゃんとケルベロスが守ってきた冥界をリゾート地にはさせねぇって言ってなぁ。自分の力だけで解決しようとしてるんだ」


「ペルセポネだけの力で? わたしが動いた方が……」


 暗殺すれば一瞬で終わるのに。


「ぺるみは血を流さずに解決する方法を考えてるみてぇだなぁ」


「血を……流さずに?」


「穏やかな冥界を守る為に、血は必要ねぇだろ?」 

 

 ペルセポネ……

 なんと優しいのだ。

 愚かな天族など暗殺してしまえばいいというのに。

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