ベリアルの物語(6)
今回はベリアルが主役です。
「でも……天界にいた時にそんな風に感じた事はなかったけど」
本当にオレに赤ん坊を授ける力があるのか?
「もしかしたら……ベリアルが幸せに暮らせているからじゃないかしら」
イナンナが微笑みながら話してるけど……
「……え? 幸せに……?」
「ベリアルの身体から幸せが溢れ出して、それで赤ん坊が授かりやすくなる。そんな感じかしらね……」
「……オレでも誰かの役に立てたのか」
「ふふ。お礼にお菓子を作ってきたの」
「え? お菓子を? イナンナが?」
「ええ。天界にいた頃に渡していたお菓子は家にあった物だったけど、これは手作りよ」
「うわあぁ! オレの為に作ってくれたのか? ありがとう!」
すごく旨そうなクッキーだな。
赤いけどイチゴのクッキーかな?
「ふふ。わたしの大好物が入っているのよ」
「えへへ。いただきますっ!」
イチゴかな?
それとも、ラズベリーとか?
「……え? イナンナの手作りクッキー? ダメ! ベリアル! 食べちゃダメ!」
ん?
ぺるみが慌ててるな。
もしかしてぺるみも食べたいのか?
オレが全部食べると思ったみたいだな。
ちゃんとぺるみの分も取っておくから安心しろ。
「サクッ! ……!? か……辛ぁぁぁぁい! 辛い! 辛い! 水! 水をくれぇぇ!」
なんだこれ!?
辛い!
もしかして嫌がらせ……?
でも、そんなはずは……
「ほら、ヤギのミルクを飲んで。辛さが楽になるから」
ぺるみがコップを渡してくれたけど……
辛いよぉ……
「うぅ……辛い……舌がしびれる……」
「あら? ベリアルは鳥だからトウガラシを食べても平気だと思ったのに。うーん。創り物の身体でもやっぱり辛さは感じるのねぇ」
イナンナ?
鳥はトウガラシを食べても辛くないって事か?
じゃあ、オレはヒヨコだけど鳥じゃないんだな。
って、そうじゃなくて……
舌が痛いよぉ!
「イナンナは天界にいた頃から辛い物が好きだったんだよ。お母様の宮殿に遊びに来てくれた時もお菓子に辛い物をかけて食べていたの」
ぺるみが心配そうにオレの頭を撫でている……
「ぺるみぃ……」
なんて優しいんだ。
ん?
いや、違う。
「ぐふふ。ぐふふふ」
こいつ!
どさくさに紛れてオレを撫でてるんだ!
この変態め!
それにぺるみには治癒の力があるだろ。
「変態め! いいから早く治癒の力を使え!」
「なんだ。ばれたか……」
やっぱり故意犯か!
「まったく……変態なんだから……はぁ。やっと治った……」
「あはは! ごめん、ごめん。辛さに悶絶するベリアルがかわいくて……う……」
ん?
ぺるみが険しい表情になった?
「どうした? 大丈夫か?」
「……急に気持ち悪……ごめん……トイレ……」
ぺるみが慌てて空間移動したけど……
大丈夫かな?
さすがにトイレに付いていくわけにもいかないし……
「おや? これは……わたしの予想通りか?」
ベリス王が呟いたけど……
「ははは! もしかしたらそうかもなぁ。さすがベリス王は商売の天才だなぁ。ぴったり予想通りだ!」
ヨシダのじいちゃんが嬉しそうに笑っている?
「あらあら。これはゼウスが大変な事になりそうね。大変なのは仕事を押しつけられるウリエルかしら? でも、女の子が産まれてきたら大興奮でしょうね。ふふ」
イナンナも嬉しそうだ。
なんの話をしてるんだ?
オレにはさっぱり分からないよ。
今回で番外編は終わりです。
次回からは本編に戻りエンディングに向かいます。