ベリアルの初恋(3)
今回はベリアルが主役です。
「……お母様? どうしたの?」
え?
ペルセポネ様!?
と、ヘスティア様!?
ハデスの一番上の姉のはず。
どういう事だ!?
「あぁ……ペルセポネ。ファルズフが……遠くに行く事になりそうよ?」
「え? ファルズフが?」
「ええ。大切な用事ができたらしいの」
「そう……」
「お母様は、少しヘスティアとお話があるから……ベリアル、少しだけペルセポネを頼めるかしら?」
え?
オレが?
ペルセポネ様と二人きりで?
こうして、憧れていたペルセポネ様と初めて話をする事になった。
……?
ペルセポネ様?
ぼーっとしている?
そういえば、さっき主治医が薬を飲ませて意識を朦朧とさせているって言っていたな。
そのせいか?
もしかして、主治医を追い出す為に行方不明になった振りを?
でもペルセポネ様は何も知らないみたいだ。
「……ファルズフは、悪い人だったのかな?」
え?
ペルセポネ様?
「あの……なぜ……そう思うのですか?」
「……ファルズフは……わたしが幼い頃からずっと……お父様とお母様の悪口を言っていたから……わたし……誰にも言えなくて……」
「ペルセポネ様……」
泣かないでください。
あなたには笑顔の方がよく似合います。
「うぅっ……わたしが悪い子だから病にかかったの。だから、お茶に薬を入れて飲まないといけないって……家族には秘密にしないと薬が効かなくなるって……ずっと病が治らないと、お父様とお母様が悲しむって……」
あぁ……
幼い頃からずっとそう言い聞かせられていたのか。
何が真実かすら分からなくなっているんだ。
かわいそうに……
「ペルセポネ様……もしも……また神やデメテル様の悪口を言う奴が現れたらこう言ってください。クソヤロー……と」
「……え? ク……?」
こんな汚い言葉は教えない方がよかったか?
まあ、言う事も無いだろうしな。
神を悪く言う奴なんてそうはいないからな。
主治医は自宅に軟禁される事になった。
ペルセポネ様の名誉を守る為に今までの罪は伏せられたようだった。
もう二度と自宅から出る事は無いはずだが……
あの主治医は危険だな。
軟禁で平気なのか?
勝手に抜け出して悪さをしないといいけどな。
その後すぐ事件が起きた。
ハデスがペルセポネ様に一目惚れして冥界に連れ去ったんだ。
あのバカ……
女に免疫が無いから……
連れ去りから一か月程すると、今度はハデスが行方不明になった。
オレは時間を見つけてはハデスを捜した。
でも、どこを捜してもいなかったんだ。
そして、オレは何の罪か分からないまま、なぜか地上に追放された。
神力の強い天族は魔族に憑依させられるのに、オレはなぜか天族の身体のまま追放されたんだ。
いきなり地上に放り出されて……
オレは自暴自棄になった。
今までどんなに虐げられても我慢してきたのに……
もうどうなっても構わない。
そういえば、人間と魔族は仲が悪いんだったな。
魔族は人間を食べて……そうだ。
確か『勇者』が魔族を倒すんだ。
ははは!
おもしろい!
お互いに殺し合えばいい!
はははは!
そして、オレはヨータを異世界から連れてきた。
……その後、ルゥに神力を全部吸いとられて、ヒヨコの姿になって。
まさかルゥがあのペルセポネ様だったなんて……
しかも……こんな、ど変態だったなんて!
返せよ!
オレの淡い初恋の思い出を!
あああ!
騙された気分だ!
……でも、撫でられて吸われるのは嫌いじゃないな。
誰かにこんなにかわいがられるのは初めてだから……
それに、ペルセポネ様に撫でられたいってずっと思っていたし。
でも……でも……
ヨダレと鼻血だけは勘弁してくれえぇぇ!
あと、嫉妬したハデスが怖過ぎるんだよ!
ん?
ヨシダのじいちゃんがオレを見てニヤニヤしてるな?
……?
まさか、ぺるみを好きだって口に出して言っちゃっていたとか!?
いや、だとしたらハデスが怒り狂うはずだ。
気のせい……か?
いや、やっぱりニヤニヤしているぞ?