ベリアルの物語(4)
今回はベリアルが主役です。
「無意識に……か。人間がオレをかわいがるのはオケアノスが溺愛していた存在だから……なのか?」
オレがかわいいからだと思ってたんだけど。
「分からねぇなぁ……何が真実なんだろうなぁ」
ヨシダのじいちゃんにも分からない事があるのか……
「そっか。まぁ、実際オレはかわいいから、かわいがられるのも当然だけどな」
「ははは! そうか、そうか。ん? ベリアルは、いつの間にかスノーボールクッキーを食い終わってたんだなぁ」
「うん! 旨かったよ! ありがとう、じいちゃん。オレ……誰かの役に立ててたんだな」
「あぁ。ベリアルは立派だ。偉いぞ。偉くてかわいくて最高だ。ははは!」
「そっか……天界にいた頃とは全然違う。えへへ。オレ、この世界に来て良かった。こんな温かい気持ちを知れたのはこの世界に来てからなんだ。……いや、違うかな? うーん……」
「んん? どうかしたんか?」
「うん。遥か昔、天界でひとりぼっちだったオレにお菓子をくれた女の子がいたんだ。でも、よく覚えてなくて。思い出そうとするとボーっとするんだ……」
「そうなんか?」
「あれは夢……だったのかな?」
あまりに辛過ぎて、助けてくれる誰かを妄想してたのかも。
「ふふ。夢じゃないわ」
イナンナ……?
帰ってきてたのか。
イナンナは第三地区に帰ってきてから、ブラックドラゴンだったじいちゃんと一緒に浮遊島を創って移り住んだんだ。
ぺるみの神力で浮く小さい島……か。
遥か昔叶わなかった幸せを今手に入れたんだな。
ドワーフのじいちゃんと島創りをしてる時はすごく楽しそうだった。
三か月くらい帰ってきてなかったけど……
「イナンナ? 夢じゃないって……?」
「その女の子はわたしだから」
「……え? どういう事だ?」
「幸せそうね。ベリアル……」
「イナンナ……えっと……その頃の事はよく覚えてないんだ」
「昔の事だし……仕方ないわ」
「どうして毎日お菓子をくれたんだ?」
「……ベリアルが死んでしまいそうなほど空腹だったからよ」
「……イナンナ?」
「あの頃ベリアルはひとりぼっちで、保護者もいなかった。天界は厳しい場所よ。保護者のいない子が一人で生きていくのは無理なの」
「だから、オレに食べ物を?」
「……わたしだけではないわ」
「え……?」
「クロノス……」
「クロノス? ハデスの父ちゃんの?」
「……そうよ。クロノスもベリアルに食べ物を渡していたの」
「クロノスが? 何の記憶も無いけど……」
「そうでしょうね。クロノスがその記憶を消したのよ」
記憶を消した?
遥か昔、何があったんだ?




