ベリアルの物語(3)
今回はベリアルが主役です。
それにしても、ぺるみは嬉しそうにオレのグッズを見ているな。
オレの事を大好きな気持ちが伝わってくる。
まぁ、オレはかわいいから当然か。
「ぐふふ。ぐふふふ。こっちのお着替えセットは……そうだなぁ。『ピヨピヨピヨちゃん断崖絶壁に追い詰められて危機一髪! 一か八かの大勝負。やっぱり負けたか包帯グルグルグルグルリン』とかどうかな?」
相変わらずぺるみのネーミングセンスは最悪だ。
「ほぉ。なるほど。『ピヨピヨピヨちゃん断崖絶壁に追い詰められて危機一髪! 一か八かの大勝負。やっぱり負けたか包帯グルグルグルグルリン』ですか。素晴らしい!」
ベリス王……
オレのぬいぐるみはどんな目に遭わされてるんだ?
「ん? ぺるぺるとベリス王は仕事か?」
ヨシダのじいちゃんがお皿を持って歩いてきた。
甘い匂いがするぞ。
アンジェリカのじいちゃん達と、やけ酒を飲みに行って裸踊りをしなかったみたいだな。
捕まらなくて良かった。
「じいちゃん! お菓子か? お菓子か?」
「ははは。そうだ。ベリアルは、よく分かったなぁ」
「チョコレートかな? クレープかな?」
「んん? ちょっと違うなぁ。これはスノーボールクッキーだ。それと、ヤギのミルクだぞ」
「スノーボールクッキー?」
スーたんの名前の由来になったクッキーだよな。
「そうだ。群馬で買ってきたんだ」
……え?
グンマで?
でも、向こうの世界は滅亡しそうになってたけど……
ぺるみの神力で二十年くらい大地の時間を戻したんだっけ?
「じいちゃんはグンマに行ってきたのか。どうなってた?」
「……妊婦がいっぱいいたなぁ」
「妊婦? ふぅん。向こうの世界は赤ん坊が産まれなくなったって聞いたけど。サクサク」
「ベリアルのおかげだ」
「オレのおかげ? オレは何もしてないけど。サクサク」
「ベリアルはオケアノスが創り出した『心』だった。まぁ、その事を覚えてねぇみてぇだけどなぁ。この『人間と魔族の世界』は遥か昔オケアノスの為に創ったものだった。そしてベリアルはオケアノスが溺愛していた赤ん坊みてぇな存在。だからかなぁ。ベリアルには誰かを妊娠できる身体……? 妊娠しやすい身体? そんな風にする力があるみてぇなんだ」
「妊娠? オレにそんな力があるのか? サクサク」
「始まりはハーピーだった」
「ハーピー?」
「ハーピーは妊娠できねぇ身体だったんだ。でも、オークとの間にハーピーちゃんが産まれただろ?」
「オレは何もしてないけど……?」
「その場にいるだけでいいんだ。ベリアルは陽太とゴンザレスと、この『人間と魔族の世界』を旅してきただろ? だから、この世界は子供がいっぱい産まれてるんだ。ちなみにベリス王の娘もその一人だ」
「ベリス王の母ちゃん……? 妊娠する前に会った事はないけど……サクサク」
「うーん。ベリアルが直接会わなくてもいいみてぇだなぁ。ベリアルから溢れ出す力が世界中に広がった。そんな感じか?」
オレにそんな事ができるのか?
うーん……
よく分からないな。




