ベリアルの物語(1)
今回はベリアルが主役です。
「あぁ……素敵だったなぁ」
ん?
ぺるみが幸せそうに、うっとりしている。
今日はレオンハルトとアンジェリカの結婚式?
即位式だったか?
まぁ、そんな感じのやつだったからな。
第三地区に帰ってきて三十分くらい経つのにずっとニコニコご機嫌だ。
結局、レオンハルトはヘリオスより早く結婚したのか。
レオンハルトとアンジェリカはアカデミーを辞めてプルメリアに行ったんだよな。
アンジェリカのじいちゃんは、かなり反対したらしいけど最終的には本人達の意思を尊重したみたいだ。
それに、アンジェリカのお腹に赤ん坊がいるって分かったから認めるしかなくなったみたいだし。
って言っても本心は許してないのが見え見えだけどな。
レオンハルトとアンジェリカならプルメリアを豊かで温かい国にできるはずだ。
それにしても、後から聞いたけどプルメリアの前の王はクソ野郎だったんだな。
悪い事を全部王妃のせいにして自分は被害者面してたなんて……
公開処刑されて清々した。
領地に帰った、前の王妃と弟も式に参加してたけどレオンハルトとは良い関係みたいで安心した。
これから、どうなるのかは分からないけど仲の良い兄弟って感じだったし……
レオンハルトなら皆が幸せになれる方法を見つけ出せるはずだ。
ぺるみは人間とは距離を置く事になってるから少し離れた場所で隠れて見てたんだけど……
ずっと泣いてたな。
でも、悲しくて泣いてるんじゃなくて嬉し泣きかな?
いや、やっぱり悔し泣きか?
前の王妃を悪者だって思ってたお詫びにオレのお着替えセットをあげたらしいんだけど、それがもう手に入らない物で……
それを身につけたオレのぬいぐるみを抱っこしてる前の王妃を羨ましそうに見てたんだよな。
まったく、どれだけオレの事が好きなんだよ。
今もオレを吸いながらご機嫌だし。
……って!
「おい! この変態め! いつの間に吸ってたんだ!?」
「ぐふふ。ちょっとくらいいいでしょ? 毎日毎日天界からの使者の相手で疲れているんだよ。あのクソ野郎どもめ……」
「お前……一応神の娘なんだからクソ野郎はダメだろ」
「え? でも『クソ野郎』は遥か昔、天界でベリアルが教えてくれたんだよね?」
「うぅ……それはそうだけど……」
「あ、でも最近はほら、前に話した天界の数学者が助けてくれるようになったの」
「ん? ああ、掛け算のやり方を教えてやったっていうあの数学者か?」
「うん。かなり偉いらしくて、クソな使者に色々言ってくれたみたい」
「へぇ。そうなのか……って『クソな使者』は、やめろ」
「あと、聖獣王も毎日冥界に遊びに来ているんだよ」
「聖獣王が?」
「うん。お菓子は毎日第三地区でもらっているんだけど、もっと食べたいみたい」
「そうだな。毎日第三地区で一緒にお菓子を食べてるぞ。でも、あれが聖獣王か。お菓子を食べながら犬みたいに尻尾を振ってるぞ?」
全然偉そうに見えないんだよな。




