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レオンハルトの物語(26)

今回はレオンハルトが主役です。

「レオンハルト! しっかりしろ!」


 男爵がわたしの父親だったのか……

 あぁ……

 嫌な気持ちは微塵もない。

 尊敬していたからな……

 だが……

 アン……

 すまない。

 もう迎えに行けそうにない……

 また君を泣かせてしまうわたしを赦してくれ。


「……え? これは……」


 わたしの傷口を見た男爵の動きが止まった?

 それほど酷い傷なのか……

 ……?

 男爵が、わたしの左胸のポケットから何かを取り出した?


「あ……うふふ」


 マクラメが笑っている?


「んん? ははは! レオンハルトは弱虫さんだなぁ」


 ヨシダさんも笑っている?

 これは一体……


「ヒヨコ様のぬいぐるみ……か」


 王妃が安心したように微笑んだ……?


「うわあぁぁん! 良かった! レオンハルト! 良かったあぁ!」


 おじい様が、わたしにしがみついて泣いているが……


「わたしは……死なないのか?」


 ヒヨコ様のぬいぐるみとは?

 アンが渡してくれたぬいぐるみの事か?


 左胸のポケットから取り出されたぬいぐるみを見ると……

 あ……

 これは……

『凛々しいピヨちゃん。鎧を着て世界を平和に導くよ。でもかわいいおててにペロペロキャンディを持っているね。皆で武器を捨てておいしいお菓子を食べようよ』のぬいぐるみが持っている鉄製のペロペロキャンディがへこんでいる?


「アンジェリカがレオンハルトを守ったんだなぁ」


 ヨシダさんが優しく微笑みながら話しているが……


 そんな事があるのか?

 こんな小さなペロペロキャンディに偶然ナイフが刺さるなんて……

 まるで神様がわたしを助けてくださったかのようだ。


「(ぷはっ! まぁ、そんな感じだなぁ)」


 ヨシダさんが何かを呟いたが……

 よく聞こえなかったな。


「ええ!? ああ! もう! 吉田のおじいちゃん! お城に船が刺さっているよ!?」


 この声は……

 ペリドット?

 いつの間にか来ていたのか?

 

 ……!?


 え……!?

 なんだ!?

 この音は!?

 何かが爆発したような音が……

 それに、地面が揺れている。

 まさか……

 いや、絶対におばあ様が大砲を撃った音だ!


「うわあぁ! まさかおばあ様!? また大砲を撃ったの!?」


 ペリドット……

 その通りだ。

 わたし達のおばあ様はそういう人なのだ。


「もう。おばあ様は仕方ないな……あれ? レオンハルトは眠くなったのかな?」


 ……え?

 言われてみれば確かに……

 だが、このまま眠るわけにはいかない。

 おばあ様を放っておいたらまた大砲を撃つはずだ。


「ふふ。レオンハルト……安心して眠ってね。おばあ様の事はわたしに任せて。お城も直しておくから。お疲れ様。よく頑張ったね」


 ……?

 口に出していたか?

 まるでわたしの考えを聞いていたかのような言い方だが……

 それに、お城を直す?

 王宮を建て直すのか?

 ペリドットが?


 あぁ……

 ペリドットの優しい声を聞いていると心が落ち着く。


 意識が遠退いていく……

 目の前が真っ暗に……

 この七日間まともに眠れなかったから……


 こうして、二日後の夕方まで眠り続ける事になるのだが……

 呑気にアンの夢を見ている間に、プルメリアの未来を変える話し合いが行われていた事などまだこの時は知る由もない。

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