レオンハルトの物語(25)
今回はレオンハルトが主役です。
「母親は自分を恥じていた。真っ直ぐな女だったからな。陛下に脅され、仕方なく一度だけ他の男と……だが……お前を心から愛していたのは事実だ。真実を暴露してもお前だけは守り抜こうとしていたのだ」
王妃が悲しそうな瞳をしながらわたしに話している。
「そんな……」
「母親を恥じるなよ? あの時はそうするしかなかったのだ。受け入れなければシャムロックを攻撃すると陛下に脅されてな……」
「父上……なんて卑劣な……」
「なんとかして母親の毒殺を阻止しようとしたが間に合わなかった」
「王妃……そうだったのか……」
「わたしと息子の未来は全てお前に任せよう。生かすなり殺すなり好きにしろ」
「……王妃。……はい! 好きにします!」
王妃は、わたしが二人を生かす方法を見つけ出すと信じているのか……
わたしが母上の息子だから……
よし!
そうと決まれば父上を捕らえに……
「危ない!」
……?
王妃の声が響いた?
おじい様が驚いた表情でわたしを見つめている。
……え?
何かがわたしの胸に当たった……?
一体何が……
……?
わたしの左胸に小刀が……
「邪魔な奴め……わたしの息子の振りをする汚らわしい奴め……」
……父上?
いつから、ここに……?
父上がわたしを刺したのか?
いや……
違う……
こいつは父親なんかじゃない!
あぁ……
痛い……
あまりの痛みに膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れ込む。
「レオンハルトォ!」
わたしの名を叫びながら駆け寄ってくる男爵の姿が見える。
わたしは……
このまま死ぬのか?
「男爵、お前……領地に追いやったのになぜここに……邪魔な奴め……お前も死ねぇぇ!」
クソ野郎……
ペリドットが言うクソ野郎とは、こういう奴の事か。
わたしを刺したナイフで男爵を刺そうとしている。
男爵……
避けてくれ……
「レオンハルトォ!」
いつもは殿下と呼んでいたが……
男爵が、わたしの名を呼んでいる?
「何がレオンハルトだ……親子揃って死ねぇ!」
……え?
今……
なんと?
親子……
揃って……?
まさか……
わたしの父親は……
「死ぬな! レオンハルト!」
「隣国との境にある領地を守る為に生かしておいたというのに……もういい! 死ねぇ!」
「うるさい! 黙れ!」
男爵がクソ野郎を殴り上げた……
まあ、そうなるだろうな。
ひ弱なクソ野郎と、戦場の死神……
死神が勝つに決まっている。
殴り上げられる人……
今日だけで二人見たな。
最期に思うのがこれか……
「レオンハルト……大丈夫か!? あぁ……レオンハルト!」
男爵がわたしを仰向けにした。
あぁ……
左胸が痛い……
だが……
刺されたにしては我慢できる痛みのような……?
死ぬほどの痛みとは、こういうものなのか?




