レオンハルトの物語(24)
今回はレオンハルトが主役です。
「リコリス王国に逃げれば、陛下がお前に手出しできないだろうと考えた。そして、お前なら妹を必ず連れ出すと信じていた」
王妃は、わたしと妹を救おうとしていたのか。
そんな王妃を憎んでいたとは……
わたしは、なんと愚かなのだ。
「……それで、妹を簡単に連れ出せたのか」
「簡単に連れ出せた事に疑問を持たないとはな。……そんな事でプルメリアの王になれるのか?」
「……王妃?」
今、わたしがプルメリアの王になると言ったのか?
「今すぐ陛下を討て! そして……わたしの事も……討つのだ」
「……そんな」
全てを知った今、王妃を討つ事などできない。
「陛下の暴走を止めるのだ! そして……わたしも……もう楽にしてくれ……第一王子も助け出されたしな……」
「まさか……商人に兄上を売ったのは、救う為……? 」
「確かに、それはわたしと父の考えだ。このままプルメリアにいるよりは良いと思ってな……大量の金貨は陛下の懐だ」
「……! 父上……なんて愚かな事を」
「あの時の商人……あれは不思議な男だった。まるでわたしの心を聞いたかのように、小声でこう言ったのだ。『もう少しの辛抱です。すぐに助けが来ます。第一王子は安全な場所に避難させます』とな」
「……え?」
「こうも言っていた。『シャムロックの暴れん坊の息子が腐った王を討ちに来る』」
「シャムロックの暴れん坊……?」
「お前の母親だ。あれはすごい女だった」
「それは一体……?」
「キラキラ輝く……まるでお日様のような……」
「王妃……?」
「傷つき苦しむわたしを照らしてくれるお日様だった。……これ以上陛下を野放しにしてはいけない。妹の母親も殺されている。これ以上被害者を増やしてはいけない! さあ! 早く行け!」
傷つき苦しむ……?
父上は女に溺れた?
まさか……
王妃は父上に無理矢理……?
そんな……
王妃も被害者ではないか!
「……王妃……わたしは……王妃を殺せない……」
「甘いな……今までの陛下の悪事はわたしの行いという事になっている。今さら助かるはずがない。……だが……息子は……どうしたものか……このまま生き続けても……苦労するのは目に見えている。だが……」
「……愚かです」
「……え?」
「王妃は愚かです!」
「……? 何を……」
「悪いのは父上……あの男だ!」
「……ふっ。あはは! 本当にお前は母親にそっくりだな」
「……え?」
「母親と同じ事を言っている」
「母上と……?」
「陛下の愚かな行いを白日の元に晒すと……」
「まさか……」
それで母上は毒殺されたのか?




