レオンハルトの物語(20)
今回はレオンハルトが主役です。
「殿下? 大丈夫ですか?」
おじい様の存在を思い出し、慌てているわたしに男爵が尋ねてきたが……
「大変だ! おじい様が……シャムロックの祖父が王妃を討ちに来ている事を忘れていた!」
「……!? 王妃に近い兵でない限り見つかっても大丈夫だとは思いますが……」
「急ごう! おじい様も心配だが、問題はおばあ様だ!」
「……え?」
「シャムロックの船にある大砲を撃つ準備を始めていて……今もマクスとリュートが止めているはずだ」
「大砲!? というより、なぜ船が王宮に突っ込んだのですか?」
「それはヒヨコ様が……とにかく王妃の元に急ぐぞ!」
「はい! マクラメ、先に行き様子を見てこられるか?」
え?
マクラメだけを先に行かせるのか?
危険だ!
「はい!」
……!?
マクラメが窓から……
いや、窓があったであろう場所から飛び降りた!?
「マクラメ!」
窓から下を見ると……
嘘だ……
まるで翼が生えているかのように瓦礫の山を飛び越えている。
「マクラメは大丈夫です。さぁ、あればの話ですが我々は階段から行きましょう!」
男爵はマクラメを信じているのだな。
わたしも……
こんな風に信頼し合える父親が欲しかった。
いや、違う。
王は国の父であり、王妃は国の母。
そうだ。
わたしはプルメリアに暮らす全ての者の父になるのだ。
男爵のような立派な王になりたい。
国の為には死神と恐れられ、家族には愛を注ぎ信頼する……
そんな強く優しい王になりたい。
どうしよう、どうしようと心配ばかりするのはもう終わりだ!
わたしは父上のような王にはならない。
母上のように民を慈しみ、男爵のように勇ましく国を守る王になるのだ!
男爵に手を引かれながら、なんとか外に出ると……
これは……
外から見ると王宮にシャムロックの船が完全に刺さっている。
あぁ……
こんな事になって、シャムロックのおじい様とおばあ様は処刑されたりしないよな?
絶対にわたしが王になり、お二人を助けるのだ!
ん……?
少し離れた場所に人だかりができている?
この声は……
間違いない。
おじい様の声だ!
「この、あばずれめ! この手でぶち✕✕てやる!」
うわ……
とんでもない事を……
相手は王妃なのか?
何も見えないな。
「何!? あばずれだと!? お前の娘も同じだろうが!」
この声は王妃?
母上があばずれとは?
この会話は一体……
「まぁまぁ。今はその話はしなくていいだろ」
……!?
ヨシダさんの声まで聞こえてきた!?
「うるさい! お前は服を着ろ!」
王妃が叫んでいるが……
ヨシダさんは、またフンドシ姿なのか。
低レベルな争いが起きているようだ。
あの中に入りたくない……




