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レオンハルトの物語(19)

今回はレオンハルトが主役です。

「お母上が亡くなられたと知ったのは領地でした。……信じられなかった。あの豪傑なお方が……まさか毒で……」


 男爵の声から悲しみと苦しみを感じる……


「わたしの目の前で……今でも、あの時の母上の姿は忘れられない」


「マクスとマクラメは、ずっと心配していました。殿下が部屋に閉じ籠り、食事も摂れなくなったと……」


「あの頃は……死にたかった……母上の元に逝きたかった。だが、最期に『生きて』と言われて……」


「殿下……」


「そんなわたしに、マクスとマクラメはずっと寄り添ってくれた。二人は大切な友だ」


「そうでしたか……」


 男爵は母上と知り合いだったのだろうか。

 マクスとマクラメがわたしの友だったから、それで知り合った?

 だが……

 初めてマクスに会ったのは物心がつく前だったはずだ。

 男爵と母上が知り合いだったから、友になる為にマクスとマクラメがわたしの元に連れてこられたと考えた方が自然だろうな。


「男爵……」


「はい……なんでしょうか?」


「母上と親しかったようだが……」


「……殿下、お母上は剣の達人で、わたしは何度も手合わせをしましたが一度も勝つ事ができませんでした」


「手合わせ!?」


 しかも、戦場の死神と呼ばれる男爵が一度も勝てなかった!?


「さすがはシャムロックの王女殿下……そう思ったのを覚えています。あれは陛下との婚姻が決まりシャムロックからプルメリアに来た日の事です。いきなり訓練場に現れてその場にいた者達を片っ端から倒していったのです」

 

「……!? そんな事が!?」


「それからは時々陛下に隠れて手合わせを……」  


「……母上らしいな。確かにシャムロックの王女と呼ぶにふさわしい」


「殿下……わたしは……いつか殿下がこのプルメリアを導く存在になると信じていました」


「……え?」


「殿下はお優しいですが、それは陛下とは違うものです」


「男爵……?」


「先程娘を守った殿下のお姿は生前のお母上のように輝いていました」


「……母上のように?」


「逃げ隠れせず、友を守る立派なお姿……お母上にも見ていただきたかった」


「……きっと見ている。ずっとずっとわたしを見守っているはずだ。……母上に恥じぬ立派な王にならねば」


「絶対になれます。我が男爵家は殿下に忠誠を誓います」


「……男爵。いいのか? 今回、失敗すればわたし共々首を斬られるぞ?」


「……お母上に受けた恩を今、殿下にお返しします。わたしだけではありません。プルメリアで剣を握る全ての兵がお母上を尊敬しているのです」


「……え? それは?」


「使い捨てのように扱われていた兵を我が子のように慈しみ、専用の医院や薬草園を作り労ってくださいました」


「……そうだったのか」


「自分はプルメリアにいる全ての者達の母親なのだ……と。それに比べ今の王妃は……あ、周りが見えるようになりましたね」


「確かに……では、王妃を捕らえに行こう。……あ!」


 しまった!

 おじい様の事をすっかり忘れていた!

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