レオンハルトの物語(17)
今回はレオンハルトが主役です。
「マクラメ! 激しく揺れたが何が起きた!?」
「父上、大丈夫です。船ごと王宮に突っ込んだだけです!」
「船ごと!? ここは海からずいぶん離れているが……」
「父上! ヒヨコ様に常識は通用しません!」
男爵とマクラメは本当に王妃の手先になったのか?
この会話だけでは分からないな。
逃げた方がいいか?
だが、どこに?
「殿下、お怪我は? 陛下がお待ちです!」
男爵がわたしの手を握ると走り出す。
陛下?
父上の事だよな?
王妃ではないよな?
それにしても走るのが速い。
というより、なぜ鎧を着ているのだ?
まるで戦場にいるような気迫だ。
「男爵はなぜ鎧を?」
「マクラメから聞いて準備していたのです」
「そうか……」
まさか、王妃に全て筒抜けなのか?
だが、どちらにしろ王妃には会いに行くわけだし……
「殿下! 足元に気をつけてください!」
男爵が、わたしより一歩前を走り瓦礫が当たらないようにしてくれている?
「父上は?」
「陛下はご無事です。先程の揺れに驚かれた様子でしたがベットの下に隠れています」
ベットの下に隠れている?
……これが、プルメリアの王。
わたしの父親……
わたしの母と、兄の母を見殺しにした小心者の……
臆病者め!
あまりに腹が立ち、走る足が止まる。
「殿下? まさかお怪我を!?」
男爵が立ち止まるわたしを見て心配しているが……
「男爵……」
この思いを口に出してはいけない……
それでも……
それでもわたしは……
「はい……? 大丈夫ですか? 一旦どこかに隠れて……」
「違う……」
「……え?」
「違う! 違う! 違う!」
ダメだ……
わたしの怒りが……
父上に対する怒り、そして自分自身の弱さに対する怒りが溢れて止まらない。
「殿下?」
「わたしは隠れない! 父上とは違う!」
「殿下……」
「母上が殺された時もわたしが死の島に行かされた時も父上はいつも王妃の父親に怯え言いなりになっていた! これがわたしの父親か!? こんな臆病者がプルメリアの王なのか!?」
男爵が驚いた表情でわたしを見つめている。
王妃の手先でも構わない!
今この場で首を斬られても構わない!
「殿下は……リコリス王国に行き変わりましたね。まるで……」
……!?
男爵の話を遮るように、マクラメがいる後ろの壁が崩れてきた!?
このままではマクラメが……!
「危ない!」
マクラメを抱き寄せると崩れてきた壁側にわたしの背を向ける。
もしかしたら王妃の手先かもしれないが……
マクラメは大切な友だ!
……?
壁が……
崩れてこない?
「殿下は本当にお母上によく似ておられます」
男爵の声が聞こえてきたが……
さらにすごい粉塵で周りが見えなくなった。
一体何が起きたのだ?




