レオンハルトの物語(14)
今回はレオンハルトが主役です。
「弟がこう言ってくれたらいいなぁ。『母のせいで心を壊した兄の世話をさせて欲しい』ってなぁ」
ヨシダさんが苦しそうに話しているが……
「……母親の罪滅ぼしをさせると?」
幼い弟に……?
「そうだ。妹は女の子だから捨てられた。でも、弟は何不自由なく幸せに暮らしてきたんだ。他人を不幸にしてなぁ。兄達は母親を殺されて、それでも王である父親は王妃の言いなりになるしかなかった。父親は被害者か? いや、違う。被害者なんかじゃねぇ。結局四人の子供を誰一人幸せにできなかった……愚か者だ!」
「……ヨシダさん?」
王妃にではなく、父上に対して怒っているように見える……?
「プルメリアは、このままじゃダメになる。父親は変わらねぇ。王妃が処刑されたら新しい王妃を迎えて子を授かり、そこでまた争いが起こるんだ。そして、あの父親は見て見ぬ振りをする。違うか?」
「……」
それは、わたしも同じ事を考えていたが……
「レオンハルト……」
ヨシダさんの表情が怖いくらい真剣になっている。
「……はい?」
「王になれ」
「……え?」
わたしが王に……?
「ですが……父上は生きています」
「マグノリア王も生前譲位したしなぁ。問題ねぇさ」
「生前譲位……」
おばあ様もその話をしていたが……
「不安な気持ちも分かるけどなぁ。ヘリオスとココもいてくれるだろ? それに、アンジェリカとスウィートもなぁ」
「それは……確かにわたしには支えてくれる仲間がいますが……でも、スウィート? 確かアカデミーで色々やらかした令嬢が同じ名だったような……」
「すっかり改心してアルストロメリア王国の王妃になるらしいぞ?」
「……!? ええ!? 改心って……」
そんなに簡単に変われるのか?
あの令嬢が!?
「民を思いやる立派な王妃になるだろう。アルストロメリア王は側室を持たねぇらしいから嫉妬に狂う事もねぇだろうしなぁ」
「側室を持たない? 大国の王なのに?」
「アルストロメリア王の母親も、王妃と側室の争いで傷ついた子の一人だ。と言ってももう大人だけどなぁ」
「……そうでしたか。どこの国も同じなのですね」
「ヘリオスも側室を持たねぇんだろ?」
「はい。ヘリオスとルゥの母親は王妃に拐われて命を奪われましたから。同じ過ちを繰り返したくないようです」
「はぁ……嫌になるなぁ」
「……はい。わたしも側室は迎えません。一生アンだけを愛し続けます」
「そうか、そうか。レオンハルトとアンジェリカなら立派な王と王妃になれるだろうなぁ。ヘリオスも若い王だが立派にやってるだろ? レオンハルトにもできるさ」
「わたしとヘリオスでは違い過ぎます」
ヘリオスは、わたしとは比べ物にならないくらい立派なのだ。
あぁ……
こんな愚かなわたしが国を守り民を愛する立派な王になれるのだろうか?




