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レオンハルトの物語(13)

今回はレオンハルトが主役です。

「後悔しないように? ……難しいです。弟を生かしても殺しても後悔するはずです」


 わたしは、どうしたら……


「王妃に母親を殺されたレオンハルトと、母親である王妃を殺される弟……か。弟にとったら優しい母親だろうしなぁ。いつかレオンハルトに剣を向ける日がくるかもしれねぇ。それでも弟を生かすんか?」


 ヨシダさんの言う通りだ。

 でも……


「罪があるのは王妃とその父親です。それを分かっているつもりではあるのに……わたしは……王妃と弟が仲睦まじくする姿を見て赦せなかった。わたしの母親と兄上の母親は王妃に殺されたのに、その王妃は息子と穏やかに暮らしている……」


「弟に教えてやれ。母親がどんな酷い事をしてきたのかを」


「……え?」


「もう赤ん坊じゃねぇんだろ? 善悪の判断くらいはできるんじゃねぇんか?」


「……それは」


「自分の未来を自分で決めさせたらどうだ?」


「生きるか死ぬかを決めさせる……?」

 

「そうだ。弟はこれから死んだ方がマシなくらいの苦しみの中で生き続ける事になる。優しいと思っていた母親が実は妹を餓死させようとするような悪者だった。その上、兄二人の母親達を毒殺し自分を王にする為に父親を幽閉していた。普通の子なら死んだ方が楽なくらい傷つくだろうなぁ。(まぁ、本当に王妃がした事だったら……だけどなぁ)」


「……弟が自ら死を選ぶようにすれば……わたしは弟殺しの罪の意識から逃がれられる? でも……」

 

 本当にそれでいいのか?

 

「それは違うだろうなぁ。弟が自ら死を選んだとしてもレオンハルトは心に深い傷を負うはずだ」


「ヨシダさん……わたしは、どうしたらいいのか分かりません」


「弟に全て話してみろ。命を助けるにしろ、奪うにしろそれは話すべきだ。どうして自分の母親が討たれるのかその理由を聞く権利があるだろ? 幼い弟がそれを知って傷つくのが嫌なんか?」


「……それは」


 あぁ……

 わたしは愚かだった。

 ヨシダさんの言う通りだ。

 なぜわたしが王妃を討つのか……

 そして弟も討たなければならないのか。

 弟にその理由を話さずに命を奪おうとしていたなんて……

 幼い弟が自分の命を奪われなければならない理由を知らぬまま……

 絶対にダメだ!

 でも……

 わたしは……

 

 あぁ……

 ヨシダさんのおかげで冷静になれた。

 誰だって自分の命が奪われる理由を言われたところでそれを受け入れられるはずがない。  

 幼い弟に自分の生死を決めさせるなんて残酷過ぎる。

 わたしは愚かだ。

 弟に罪はないと言いながら、本当は憎んでいたのか。

『何も知らずに幸せに暮らしている弟が苦しめばいい』と心の奥深くで願っていた……

 綺麗事ばかり並べ、弟の命を奪う事すら正当化しようとしていたのだ。

  

「レオンハルト……顔つきが変わったなぁ。もし、弟が生きる事を望んだら……海賊のばあちゃんに頼んでみろ」


「……え? ココのおばあさんに?」


「口は悪いけど優しいからなぁ」


「もし弟が生きていると知られたら、海賊の島に迷惑がかかってしまいます」


「暗殺者や兵士が乗り込むと思ってるんか?」


「……はい」


「大丈夫だ。あの辺りは波が荒くてそれができねぇんだ。だから、あの海賊達は捕まってねぇだろ? それにあの島には強い魔族がいるからなぁ。大量の人間が乗り込んでも簡単にやっつけるさ」


「ですが……兄と妹までお世話になっているのに弟まで……」


「レオンハルトの兄ちゃんか……王妃が兄ちゃんの母親を殺して、兄ちゃんは毒を盛られ続け心を壊した。もう二度と元通りにならねぇくらい酷い事をされたんだなぁ」


「……はい」


 兄をプルメリアから助け出した時にはヨシダさんにかなりお世話になったのだったな。

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