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レオンハルトの物語(12)

今回はレオンハルトが主役です。

 弟は何の罪も犯していない。

 ただ、王妃の息子として産まれただけだ。

 だが……

 妹は女の子だったから乳母もつけられずに飢え死にしそうになっていた。

 わたしが助け出さなければ今頃死んでいただろう。

 妹は被害者だ。

 プルメリアに戻っても生き続けられるはずだ。


 では、弟は……?

 確実に隠せる場所はないか?

 

 ……本当にそうか?

 母上を毒殺した王妃が溺愛する息子をどうして守らなければならない?

 同じ父親の血を引く弟だから?

 死ねばいい……

 苦しみ悶えながら死にゆく弟の姿を、王妃に見せればいい。

 母上はわたしの目の前で毒を盛られ苦しみの中で息絶えたのだ。

 同じ思いを王妃にもさせればいい。

 愛しい者が苦しむ姿を見て、わたしの辛さを思い知ればいい。

 でも……

 心がモヤモヤする。

 本当にそれでいいのか?

 

「……レオンハルト」


 ヨシダさんが真剣な表情で話しかけてきた?

 いつの間にか服を着ているが……


「ヨシダさん……?」


「……レオンハルトは、どんなじいちゃんになってるんだろうなぁ?」


「……え? わたしがおじいさんになったら……ですか?」


「そうだ。オレは若く見えるけど年寄りなんだ。孫もひ孫もいるんだ」


「……ヨシダさんの島にいる皆さんは若く見えると聞きました。不思議です」


「そうだなぁ。不思議だなぁ。レオンハルト……オレはなぁ、散々悪さをしてきたんだ。子供を酷く傷つけて、孫もひ孫も苦しめた。でも……赦してもらえたんだ」


「赦してもらえた……?」


「ああ。もう恨んでないから悲しまないでくれって言われてなぁ。でも、その優しさに苦しくなった。オレがしてきた事は絶対に赦されたらダメな酷い事ばかりだったからなぁ」


「ヨシダさん……」


「でも、最近になってやっと前を向けそうになってきてなぁ」


「前を向けそうに……?」


「傷つけ苦しめてきた家族や友人に謝ったんだ。心から謝って皆の幸せな姿を見守る事を許してもらえた……それが嬉しくてなぁ。こんなダメなオレを『大好きだ』って言ってくれる皆の為に、前に進もうと決めたんだ」


「そうでしたか……」


「レオンハルトはどうするんだ?」

 

「……え?」


「オレが傷つけてきた皆は生きてたんだ。だから、謝る事ができた。でも、死んで二度と会えなくて謝れなかったら……オレはずっと前を向けなかったはずだ」


「……王妃とその一族を生かせと?」


「弟の事……迷ってるんだろ?」


「……分からないのです。どうしたらいいのか何も分からない……」


「まだ若いレオンハルトにはそれを決めるのは難しいだろうなぁ。でも、これが王太子として初めての決断になるはずだ。後悔しねぇようにするんだぞ」

 

 後悔……

 何を選択しても後悔しそうだ……

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