レオンハルトの物語(9)
今回はレオンハルトが主役です。
「ヨシダのじいちゃんがやる事には、いつも意味があるんだ。きっとレオンハルトにとっても良い方に進むはずだぞ」
ヒヨコ様もペリドットと同じで、ヨシダさんを信頼しているのだな。
「……でも、ヨシダさんは縛られているけど大丈夫かな?」
「大丈夫だ。ほら顔を見てみろ。まだ目は死んでないぞ。なんとかして見張り台で海風に吹かれながら裸踊りをしようとしてる顔だ!」
「そんなに裸踊りをしたいのか……」
これがアンの初恋相手……
複雑だな。
「うわあぁぁん! レオンハルトォォ! 早くおじいちゃまを助けてぇぇ! おじいちゃまを!」
おじい様はおじい様でマストに縛りつけられたまま、わたしに『おじいちゃま』と呼ばせようとしているし……
今から王妃を討ちに行くのに緊張感がなくなっていくのが分かる。
はぁ……
大丈夫かな?
不安が増してきた……
ところでおじい様はどうしてマストに縛られているのだ?
「おばあ様? おじい様はまた何かしてお仕置きされているのですか?」
「え? ああ。プルメリアに乗り込む事を話したら、やっとこの時が来たかと一足先に王妃を討ちに行こうとしたのよ。こうやって見える場所に縛っておけば安心でしょう?」
「なるほど……でも、かわいそうだから解放してあげましょう」
「そう? レオンハルトが言うなら仕方ないわね。ついでにヨシダさんの縄も解いてあげましょうか」
「そうですね。プルメリアまでは、まだかかりますから」
こうして二人の縄を解いたが……
「ひゃっほーい! 皆、見てるかぁ?」
ヨシダさんがマストの上にある見張り台で裸踊りを始めたな……
いや、確かフンドシ?
という物を身につけているが、あれではほぼ裸だ。
船にいるシャムロックのおばあさん達がキャーキャー言いながら見ているが……
細身だが筋肉質なのだな。
これがアンの初恋相手の肉体か。
わたしも少し鍛えた方が良さそうだ。
って……
下品な事を考えてしまった。
はぁ。
ダメだな。
ヨシダさんを見ているとアンの初恋相手という風に見てしまう。
確かペリドットが『裸踊りをするけど立派な人だ』みたいな事を言っていたな。
立派……か。
うーん。
ペリドットが言うならそうなのだろうが……
とてもそんな風には見えないな。
「レオンハルトォ……レオちゃぁぁん。助かったよぉぉ……」
おじい様は縄を解かれてからずっとわたしの後ろに隠れているが……
よほどおばあ様の事が怖いのだろうな。




