レオンハルトの物語(5)
今回はレオンハルトが主役です。
マクラメに手を引っ張られながら船に乗ると……
「あらあら。レオンハルトは目が真っ赤よ?」
おばあ様が大砲を磨きながら話しかけてきた。
大勢魔族がいる幸せの島に大砲を撃ち込むくらいだからな。
プルメリアにも何発か撃ち込むつもりだろうか……
「あぁ……あの……大丈夫です」
さすがにアンに挨拶に行って泣いたなんて言えないな。
「アンジェリカちゃんにお別れをして泣いたのかしら?」
おばあ様が嬉しそうに話しているが……
「どうしてそれを!?」
「わたくしとアンジェリカちゃんのおじい様は手紙のやり取りをしているのよ。ふふ。まさか殿下の孫のアンジェリカちゃんとわたくしの孫のレオンハルトが恋人になるなんて……長生きはするものねぇ」
「おばあ様!? 恥ずかしいからやめてください!」
アンの祖父であるアルストロメリア公爵は、四大国のひとつアルストロメリア王国の王族だっだ。
そして、おばあ様はアルストロメリア王国の貴族だった。
だから今でも『殿下』と呼んでいるわけだが……
数十年前は毎日のように遊ぶ友だったらしい。
でも、当時の王妃とその息子の策略により公爵は窮地に立たされた。
王妃の息子は、王になると神力を持っていたシャムロックの王女を養女にしその力を吸い取り終えると生きたまま海に捨てた。
偶然それを助けた海賊に恋をして王女は海賊として暮らすようになった。
それがココの祖母か。
かなり豪快な人らしいが……
リコリス王のヘリオスは、出産直前に母親が拐われて船上で産まれた。
リコリス王妃の手下に拐われたと聞いている。
そこに偶然通りかかったココと祖母が出産の手伝いをしたらしいが、母親は亡くなり、双子の妹ルゥは船から拐われた。
そして、ルゥを乗せた小舟は波に揺られて……
そのままルゥは海に落ち行方不明になった。
母親を亡くしたヘリオスは海賊と共に暮らす事になって……
ルゥは偶然流れ着いた死の島で魔族に育てられた。
死の島……か。
初めてルゥに出会ったのは王妃に死の島を調べてこいと言われた時だったな。
王妃はわたしを始末しようと、そう命令したはずだったが……
死の島周辺の海で魔族に襲われていたわたしとマクス、リュートを助けてくれたのがルゥだった。
一目惚れ……
そう。
わたしはルゥに一目惚れしたのだ。
次に会ったのは死の島だったな。
あの時、わたしとルゥがいとこだと知ったのだ。




