レオンハルトの物語(4)
今回はレオンハルトが主役です。
「これで終わりよ。レオが終わりにするの。これが終われば幸せな未来が訪れるわ。いえ、違う。わたし達でプルメリアの人々を幸せへと導くの」
アンが優しく微笑みながら話している。
やはりアンは素敵な人だ。
でも……
もう行かないと。
「アン……もう時間だ。行ってくるよ」
アンの涙が止まらない瞳に吸い込まれそうだ。
もしかしたらこれが最後になるかもしれない。
失敗したら二度とアンに会えないのか。
勇気を出せ!
口づけ……
口づけを……
嫌がられるかな……
でも……
わたしを見つめているアンの瞳を見ていると……
口づけせずにいられない。
アンに優しく口づけをすると、その柔らかさに胸のドキドキが速くなる。
あぁ……
必ず生きて戻ってくるよ。
アンの心からの笑顔を見る為に必ず戻ってくる。
「待っているから……ずっとレオを待っているから……」
アンを強く抱きしめると……甘い香りがする。
ずっとこうしていたいが、もう行かないと。
悲しく微笑むアンに後ろ髪を引かれながら港まで走る。
今は何時だろう?
遅れてしまったか?
急がなければ。
シャムロックの船が待っているはずだ。
わたしはプルメリアの王子だが船を持っていない。
だからシャムロックのおばあ様に送ってもらう事になっている。
あの船は大砲が大量に載せてあるから威圧感がすごいのだ。
港に着くと……
あれ?
マクスとリュートの隣にマクラメがいる。
「はぁ……はぁ……マクラメ? どうしてここに?」
「もう! 殿下! わたしだけ仲間はずれですか? 殿下とは友だと思っていたのに!」
確かに幼い頃からマクスとマクラメとは共に遊んでいたが……
「マクラメ。今日は連れていけないよ。危ないから……」
「殿下! わたしを誰だと思っているんですか? 戦場の死神と呼ばれる男爵家の長女マクラメですよ!」
「それでもダメだ!」
「うぅ……じゃあ、いいんですね? 殿下がアンジェリカ様と木陰で……」
「うわあぁぁぁ!」
まさか……
二週間ほど前にアンに口づけをしようとして勇気が出なくてモジモジしているところを見られていたのか!?
「あはは! 真っ赤になってかわいいですね。では出発しましょう!」
確かマクラメは情報収集に長けているのだった。
同じアカデミーにいるのに油断していたな。
どこまで知っているのだろう。
「マクラメ……待て! 連れていく事はできない。マクス! 止めてくれ!」
マクスはマクラメの兄だから止められるはずだ。
「え? あはは! 大丈夫ですよ。マクラメは強いですから。あぁ、かわいいマクラメと船旅か」
そうだった……
マクスは妹のマクラメに甘かったのだ。
あり得ないくらいニヤニヤしている。
だが、マクラメが強い事は知っているが今回は危険過ぎる。
はぁ……
困ったな。
「さぁ! 殿下! 行きましょう! 船の中でシャムロックの皆さんが待っていますよ。あぁ……プルメリアに帰るのは久しぶりです」
これは、もう止めるのは無理そうだ。
プルメリアに着いたらマクラメが船から降りないように考えないと。




