レオンハルトの物語(2)
今回はレオンハルトが主役です。
「レオ……わたしもプルメリアに王妃を討ちに行ったらダメ?」
アン!?
それだけは絶対にダメだ!
「危険だ……わたしだってアンと共にいたい……だが、ダメだ。アンを危険な目には遭わせられない」
「わたしだけ安全な場所にいるなんて……そんなの嫌なの。お願いよ……連れていって?」
アンの身体が震えている。
こんなにもわたしを愛してくれているのか。
「アン……待っていて欲しい。わたしが王太子になり迎えに来るのを……」
「……嫌よ……嫌……離れたくない……」
「必ず迎えに来るから。わたしを信じて欲しい……アンを独りにはさせないよ」
「レオ……」
アンの美しい瞳から大粒の涙がこぼれ落ちている。
また泣かせてしまった。
わたしのプルメリア行きが決まってからアンは不安定になっているようだ。
どうしたら落ち着いてもらえるのだろう。
アンには笑っていて欲しいのに……
そうだ!
「アンは知っているかな? 指切りの約束を……」
「ええ。未来に使う金貨に描かれているとおじい様から聞いたわ」
「わたし達も……指切りをしよう」
「指切りを?」
「わたしは必ず生きてアンの元へ帰ってくる。そしてプルメリアを豊かで幸せな国へと導く王になる。その時は……わたしの隣にいて欲しい」
「レオ……」
アンの右手の小指にわたしの小指を絡めると……
小さな手だ。
柔らかくて温かくて幸せな気持ちになる。
「アンはわたしの全てだよ。朝起きて、まず思うのはアンが素敵な夢を見られたかどうかで……夜眠る前にはアンが翌日も楽しく過ごせるようにと願っている……なんて……変かな?」
「……嬉しいわ。でも、それはわたしも同じよ? 今まではこんな風に誰かを想う事は無かったの」
「わたし達はよく似ているね」
「……わたしもそう思っていたわ」
「アンは……後悔しないかな?」
「……え?」
「わたしは……幼い弟の命を……奪わなければならない。そんなわたしを恐ろしく思う日がくるのではないかと不安で……」
「……その事で一番苦しむのはレオよ。命ある限り苦しみ続けるはずよ」
「……アン」
「なんの力にもなれないかもしれないけれど……わたしはレオの隣にいたいの」
「……ありがとう。王妃に追放されるようにリコリス王国に留学させられた時は絶望したのだ。赤ん坊の妹は連れ出せたけれど、兄はプルメリアに置いてきてしまって。でも、アンジェリカとココと同じクラスになれて安心したのを覚えているよ」
「レオ……」
「ペリドットがアカデミーに入学した事を知った時は驚いたよ。ヒヨコ様とゴンザレス様はとてもかわいかったね」
「そうね。ペリドット様が現れてからはアカデミーが変わったわ。学長の理想通りのアカデミーになりそうだし、それだけではなく市井の広場に集まった貴族達も平民と共にうちわを作ったりして……少し前には、こんな事は考えられなかったわ」
アンの言う通りだ。
今までは絶対にそんな事はあり得なかった。




