レオンハルトの物語(1)
今回はレオンハルトが主役です。
ペリドットがアカデミーを辞めた七日後……
ついにプルメリアに乗り込む日がやってきた。
あぁ……
もし、失敗したら……
ダメだ、ダメだ!
しっかりしろ!
今回の作戦にはシャムロックのおばあ様と、リコリス王のヘリオスも協力してくれる。
もし失敗すればそんな大切な人達を巻き込み不幸にしてしまう。
それだけは絶対にダメだ!
兄妹はヘリオスが育った海賊の島で保護してもらっているが、父上はプルメリアに残っている。
王妃はリコリス王国への留学を理由に邪魔なわたしを追放し、自身の息子を王太子にしようとしているようだが……
王妃がこのままその座に就き続けるのは危険だ。
実の娘を放置し餓死させようとするような者が国母など絶対にあり得ない。
だが……
計画通りに全て上手くいくとも限らない。
わたしは王妃を討つ事ができるのか?
失敗したらわたしだけではなく協力してくれる人達まで処刑されるかもしれない。
はぁ……
ダメだ。
こんな考えでは上手くいくはずがない。
冷静にならないと……
気持ちを落ち着かせながらアルストロメリア公爵邸まで歩く。
プルメリアに行く前に恋人のアンジェリカに会っておきたくて邸宅を訪ねたが……
会えるだろうか。
もう船が出るから十五分しか、この場にいられない。
マクスとリュートは先に港に向かっているが……
わたしが出港に遅れるわけにはいかない。
あ……
門の外で立っている女性の姿が見える。
「レオ……」
アン?
まさかわたしが来るのを待っていたのか?
すごく辛そうな表情だ。
「アン……そんな顔をしないで」
今にも泣き出しそうだ。
「今からプルメリアに?」
アンの美しい声が震えている。
「そうだね……十五分後には港に向かうよ」
「王妃を倒したら……もうリコリスでは暮らせないのね」
「……ああ。そうだね」
成功しても失敗しても、今のようにリコリス王国では暮らせないのか。
「……不安なの?」
アンは、わたしのグチャグチャな気持ちを分かっているようだ。
顔に出ていたか……?
「もし失敗したらわたしに付き合ってくれる皆を不幸にしてしまうからね」
こんな事は言いたくなかったが……
アンの前では、つい弱い自分が出てしまう。
「……レオ?」
「うん……?」
「大丈夫……絶対に成功するわ」
アンが震える身体で抱きついてきた。
柔らかくて温かい。
失敗したらアンに二度と会えないのか。
「……アン」
「レオは覚えている? ヨシダさんに思いを寄せていたわたしの悩みを聞いてくれた事を……」
「そうだったね。あれは、ペリドットがプリンアラモードを作ってくれた時だったね」
「その時……レオがペリドット様を諦めようとしている事を話してくれて……」
「……そして、わたし達は……いつの間にか惹かれ合っていたのだ」
あの頃アンはヨシダさん、わたしはペリドットに思いを寄せていた。
つい最近の事なのに懐かしく感じる……




