スウィートちゃんの物語(8)
今回はスウィートちゃんが主役です。
「なぁ、スウィートちゃん? 年をとれば皆いつかは死ぬんだ」
ヨシダさんが真剣な表情で話しているけど……
……死ぬ?
おじいしゃまが?
おじいしゃまは、いつも元気だから考えもしなかったわ。
「……わたしは……こんなに愛してくれたおじいしゃまの最期に立ち会えないの?」
「そうだろうなぁ」
「そんな……」
「悲しいだろ? 王妃って立場はスウィートちゃんが思う以上に辛い事が山積みなんだ。シャムロックの王妹のココも覚悟してるみてぇだぞ?」
「ココも……? ココは辛くないの? 家族に会えなくて寂しくないの?」
「寂しくて堪らねぇはずだぞ? それでも頑張れるのはリコリス王がいるからだろうなぁ。今までの生活全てを捨てでも付いていきてぇんだろう。好きで好きで堪らねぇ存在がココの心を奮い立たせてるんだ」
「わたしは、おじいしゃまを捨てないといけないの? おじいしゃまはわたしがいないと生きていけないわ」
「じゃあ王妃になるのをやめるんか?」
「……それは」
「結婚ってやつは、難しいよなぁ、好きな相手とずっと一緒にいてぇだけなのに今までの家族とは距離ができちまう」
「……そんなの嫌よ。今度こそおじいしゃまが死んでしまうわ」
「安心させてやればいい」
「……え?」
「この二、三日しっかり世話をするんだ。神様からじいちゃん孝行の機会を与えられたと思えばいい」
「それは……?」
「リコリス王国じゃあ、じいちゃんを見捨てようとしたのに……ずいぶん成長したなぁ。偉いぞ?」
「……ヨシダさん? それって……」
まるでさっき時間が止まった時の事を見ていたかのような言い方ね。
「産まれてから今まで受けてきた愛をしっかり返してやれ」
「愛を……返す?」
「愛は回るものだからなぁ。クルクル回るんだ。それは家族じゃなくてもいいんだぞ? 今までじいちゃんや家族からもらった愛を今度はアルストロメリアの民に返してやれ。そうすればスウィートちゃんは立派な王妃になれるはずだ」
「ココみたいに……なれる?」
「ははは! 比べる相手はココなんか? ココも素敵だけどなぁ、もっと上を目指せ!」
「もっと上を……? ……わたしも、ペリドットみたいになれる?」
わたしみたいなのがペリドットを目指したら笑われるかしら……
「……なれるさ。ぺるぺるは、いつも誰かの為に泣いたり笑ったり怒ったりしてるだろ?」
「……確かに……そうだわ」
「でも、しっかり息抜きもしてるんだ」
「息抜き……?」
「そうだぞ? さっきだってヒヨコちゃんをがっつり吸ってからアルストロメリアに来たんだ。そりゃもうニヤニヤしてなぁ。グフグフ言って気持ち悪かったぞ?」
「……ペリドットらしいわね」
「スウィートちゃんも、そうやって息抜きをしながらゆっくりゆっくり素敵な王妃になればいいんだ」
ゆっくりゆっくり……?
わたしも、ペリドットみたいに素敵な女性になれるのかしら……?




