スウィートちゃんの物語(4)
今回はスウィートちゃんが主役です。
「ちょっと……おじいしゃま……」
恥ずかしいからもうやめて!
お願いだから床に寝転がって、ジタバタしないで!
「うわあぁぁぁん! 嫌だよぉ嫌だよぉ! スウィートちゃんと離れ離れになるなんて嫌だよぉ!」
はぁ……
困ったわ。
おじいしゃまは、わたしの事になると手がつけられなくなるんだから。
「でしたら、おじい様もアルストロメリアで共に暮らしませんか?」
……?
陛下?
おじいしゃまも一緒にって?
「わたしも共に暮らす……とは?」
おじいしゃまが陛下に尋ねているけど……
「誰も知り合いのいないアルストロメリアに王妃として来てもらうのが心苦しくて……スウィートちゃんが寂しくないようにおじい様に部屋を用意しましょう。スウィートちゃんと同じ宮に。いかがですか?」
「わたしとスウィートちゃんが同じ宮に……?」
あれ?
喜ぶかと思ったのに、険しい顔をしている?
「スウィートちゃんのじいちゃん……本当にそうするつもりなんか?」
……?
誰?
いや、どこかで見たような……?
リコリスでもアルストロメリアでも見ない顔立ちの男性だけど。
って……
そうじゃなくて、どうやって入り込んだの?
「ちょっと! 吉田のおじいちゃん! 邪魔しないの!」
……?
黒髪の女の子だけど……
この声はペリドット!?
身体のラインを隠すドレスに、広いつばの帽子を被っているけど……
絶対にペリドットだわ!
「そうだぞ。じいちゃん! 今いいところなんだから邪魔するなよ!」
ヒヨコ様!?
ヒヨコ様……よね?
あれは変装のつもりかしら?
クルクル巻かれたロングのウィッグを被っているけど。
でも、いいところって……?
まさか、ずっと見ていたの!?
「ぺ……ペリドットなの?」
変装しているつもりなら尋ねない方がいいのかしら?
でも、知り合いが見ればすぐに分かるわよね?
「……!? スウィートちゃん!? どうして分かったの!?」
やっぱり変装しているつもりだったのね。
ヒヨコ様に関しては変装する意味があるのかしら。
話すヒヨコなんてヒヨコ様しかいないのに。
「誰が見ても分かるわよ。何をしているの?」
「え? あ、いや。洗濯師の仕事をしに来たら知っている声が聞こえてきたから」
「洗濯師? もしかしてヒヨコ様のぬいぐるみの事?」
「うん。あのさ……もしかしてアルストロメリア王が結婚する相手って……」
「そうよ。わたしよ。使節団としてアルストロメリアに来たわたしを陛下が見初めてくれたの」
「うわあぁ! 素敵だね! そっか、そっか。アルストロメリア王なら絶対にスウィートちゃんを幸せにしてくれるよね!」
「ペリドット……喜んでくれるのね」
「うん! もちろんだよ。うわあぁ! そっかぁ。でも、アルストロメリア王には言い寄ってくる令嬢がいっぱいいるって聞いたけど……」
「あんなのは、まるで相手にならないわ。わたしは大国リコリスの公女なのよ? 侯爵より下の身分の令嬢になんて負けるはずがないわ。というより、他の令嬢達は陛下の身分を愛していたのよ? でも、わたしは違うわ!」
わたしは心から陛下を愛しているんだから。




