表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1357/1484

スウィートちゃんの物語(1)

今回はスウィートちゃんが主役です。

「はぁ……」


 リコリスアカデミーで問題を起こして退学させられてから、邸宅にいる事を命じられていたけど……

 リコリス王国の良さを他国に知らせる役割を任せられて来た国で王妃になるなんて。

 でも、もしペリドットがいなければわたしがジギタリス公爵の代わりに処刑されていたのよね。

 ペリドットにはずっと酷い事をしてきたのに、そんなわたしを友だと言ってくれるなんて。

 どうやってこの恩を返せばいいのか……


 リコリス王国にいた頃は見目麗しい陛下に心を奪われて王妃になりたかったのよね。

 でも、結婚が決まった『彼』は見目麗しいというよりは……


「スウィートちゃんっ! 今帰ったよぉっ!」


 あ……

 彼が帰ってきたわ。


 長いサラサラの髪にタプタプのお腹、プクプクした頬の中年男性。

 誰がどう見ても容姿は整っていないけど……

 かわいいの……

 かわいいのよ。

 かわいくて堪らないのっ! 

 特に、わたしを見て頬を赤く染めながらニコニコ笑う姿が最高にかわいいのっ!


 彼がリコリス王国に行っている二日間、たった二日なのに会えない寂しさで髪の艶がなくなったし肌も潤い不足で……

 すっかり身体中ガサガサになってしまったわ。

 お妃教育が大変なのもあるだろうけど……

 彼の笑顔が見られなくて寂しいのが一番の原因よ!


「陛下っ!」


 我慢できずに抱きつくと……

 あぁ……

 お腹のタプタプが堪らないわ。

 汗びっしょりなのは、わたしに早く会いたくて走ってきたのかしら?


「スウィートちゃんっ! こんなに痩せて……わたしがいなくて寂しかったのかな? 食事にしよう。このままではかわいいスウィートちゃんが小さくなって消えてしまう!」


「陛下……」


 陛下は心からわたしを愛してくれているのね。

 

「あ、そうだ。ペリドット様に会ってきたよ。わたしが結婚する事を話したけど……どうやら相手がスウィートちゃんだとは気づかなかったみたいだね」


「そう……」


「どうしてスウィートちゃんの名を出さずに話して欲しいと言ったの?」


 あぁ……

 陛下はわたしとの約束を守ってくれたのね。


「それは……わたしね? リコリス王国では酷い事ばかりしていたの。ペリドットは優しいから赦してくれたけど……こんなわたしを友だと言ってくれたペリドットには自分の口から報告したかったの」


「スウィートちゃんの気持ちは分かるけど……ペリドット様はもうリコリス王国には出入りしなくなるんだよ?」


 それはそうなんだけど……


「……なんとなく、なんとなくだけど。すぐに会える予感がするの」


「……え?」


「友だからかしら。そんな予感がするの。ふふ。陛下?」


「うん? 何かな?」


「わたし達が初めて会ったのはリコリス王国だったけど、あの時のわたしは最悪だったわ。わがままで嫌な子だったの。でも、このアルストロメリア王国で陛下に会った時……」


「はは。そこから先はわたしが話してもいいかな?」


 陛下がわたしの髪を撫でながら優しく話しかけてくれる。

 この優しい声が大好き。

 心からわたしを愛してくれている優しい声……


「……」


 少し恥ずかしくなって無言で頷いたけど……

 陛下の前では心が素直になれる。

 不思議だわ。

 陛下と一緒だと穏やかな時間が流れるの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ