大好きな第三地区(13)
「おじい様……もちろんです。ずっとずっと我らを温かく見守ってください」
ベリス王が、優しく微笑みながら吉田のおじいちゃんに話しかけた。
「そうだよ。ヨシダさん……いつもみたいに笑って欲しいよ」
パパが泣きながらおじいちゃんを抱きしめたね。
「まったく。皆が泣くからわたしまで涙が出てきたぞ。許すも何もわたし達は家族だろ? 皆で一緒に幸せになるのが家族だ!」
ママらしい素敵な考えだ。
この世界に来てから、ママの真っ直ぐな心に何度も救われてきたよね。
「じいちゃん……」
ベリアルがおじいちゃんに向かって飛んでいる。
食べ過ぎてゆっくりしか飛べないみたいだ。
疲れたのかな?
途中で飛ぶのをやめたね。
うつむきながら砂浜に座り込んでいる。
「……ベリアル? 大丈夫か?」
おじいちゃんが心配してベリアルの所に歩いていったけど……
「うぅ……じいちゃん抱っこ……」
ベリアルがパンみたいなかわいい翼をおじいちゃんに向けている……?
「ベリアル……」
おじいちゃんの悲しそうな瞳と、ベリアルのウルウルの瞳が見つめ合っている。
「じいちゃんには笑って欲しいよ。オレ……じいちゃんの事が大好きだから」
「……ベリアル」
「誰もじいちゃんを恨んでない。誰もじいちゃんを嫌ってない。皆じいちゃんの事が大好きなんだから!」
ベリアルとおじいちゃんが抱きしめ合う姿を見ると心が温かくなる。
(ペルセポネ……)
オケアノス?
聞いていたんだね。
(あぁ。そうだな。これでやっと前に進める……)
吉田のおじいちゃんの事?
(それもあるが……)
……?
オケアノス?
(いや、気にするな。ペルセポネ……?)
……うん?
(冥界の仕事には、間に合うのか?)
……え?
冥界の仕事?
「あああっ! すっかり忘れてたあぁぁぁ!」
「……ひっく。ぺるみはいきなり叫んでどうしたんだ?」
ベリアルが驚きながら話しかけてきたけど……
泣きべそベリアルも超絶かわいいっ!
って今はそれどころじゃないよっ!
「まずい……まずいよ! もう天界からの使者が冥界に来る時間だよ! 初日から遅刻はダメだよっ!」
「はぁ……まったく。ほれ、ばあちゃんの家で着替えるぞ。急げ!」
呆れ顔のおばあちゃんに着替えを手伝ってもらって、慌てて冥界に行く準備を終わらせると広場に行く。
急がないといけないけど空間移動する前に皆に言わないと……
「ごめんね。もう行かないと。天界の使者に勝ってくるよ!」
「ぺるみ……勝つって殴るんじゃないだろうな?」
ベリアルが呆れながら話しているね。




